最遊記

□お茶でも飲んで
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 そうだよ。



 八戒の誕生日は、


 カナンさんの誕生日
 でもあるんだ。






 思わず、握っていた
 ドアノブから手を離
 した。


 ドアの向こうには、
 八戒がいる。


 なんだけど、正直あ
 まり会いたくなくな
 ってきた。




 …カナンさんの事考
 えてんのかな?


 事情はどうであれ、
 彼氏が他の女の人の
 事を考えているのは
 、気分が悪い。


 しかしこのまま引き
 返すのも、なんかカ
 ッコ悪い。


 とりあえず、街で買
 ったプレゼントを見
 やる。


 大した物は買ってい
 ない。やはり明日に
 するべきだろうか?




 「二泊する。」


 ふと、昨日宿につい
 たときに言った三蔵
 のセリフを思い出し
 た。


 あの時は手放しで悟
 空と喜んでいたが…
 なるほど、あのクソ
 坊主はクソ坊主なり
 に八戒の事をいたわ
 っていたようだ。




 …いたわる?

 あれっ?なんで労る
 んだっけ?

 あぁそうだった。

 今日はカナンさんの
 誕生日だから…。

 八戒が参っちゃうん
 だ。



 カナンさん…。




 ていうか、こういう
 彼氏のゴタゴタに対
 して、めんどくさい
 って思うのは、彼女
 失格?


 やっぱり、これはあ
 れだな。


 あたしのカナンさん
 の認識を変えなきゃ。


 ウジウジしてても意
 味ないし。


 どうにかして、あた
 しの中でカナンさん
 を認めないといけな
 いんだ!




 「おや?どうかした
 んですか?こんな所
 に立って。」


 決心がついたので、
 さぁ部屋に入ろうと
 すれば、八戒本人が
 部屋からでてきた。


 「うわっ!八戒!や
 だなぁちゃんとノッ
 クしてよ。」



 「ノックするべきで
 した?僕。なんなら
 一度部屋に戻ってノ
 ックからやり直しま
 すが?」



 「いえ、結構です。
 マジで。」



 「そうですか。


 …なんです?僕の顔
 に何かついてます?」



 「いや…元気そうだ
 なぁと思って。」


 いつもの八戒だ。

 顔色もちっとも悪く
 ない。

 誰だよ八戒が参って
 るって言った奴。


 「あっ、そんな事よ
 り今日誕生日でしょ
 ?

 これプレゼント。」


 「わざわざありがと
 うございます。」



 「あと!」



 「はい…」



 「あたしカナンさん
 の事…







 義姉さんって呼ぶこ
 とにから。」




     †


 満足したのかすぐに
 立ち去ってしまった
 恋人の背中を見てか
 ら、八戒は彼女が渡
 した誕生日プレゼン
 トに目を向けた。



 紅茶葉がギッシリ入
 ったビンに、彼女が
 結んだのであろう、
 ヨレヨレのピンク色
 のリボンが、ただら
 しなく結ばれている。

 これではそこらの幼
 稚園児と変わらない。


 ふと、去年貰った誕
 生日プレゼントを八
 戒は思い出す。

 確か眼鏡拭きをラッ
 ピングもなしで渡さ
 れた記憶が



 「今年は合格にして
 おきましょうか。」


 後でこの紅茶葉を使
 った紅茶を持って行
 ってやろうと、苦笑
 しながらドアノブに
 手をかける八戒。



 「そう言えば…」






 さっきのは、プロポ
 ーズとして受け取っ
 て良いんでしょうか?

 あれこれ考えながら
 、ビンを開けてみれ
 ば、紅茶葉の香りが
 風とともに流れてき
 た。


 いい奴買ったんだな
 と感心しながら、八
 戒はフッと笑った。


 「…お茶でも飲んで
 聞き出しますか。」



 園児たちは買い物に
 行かせたし、保護者
 は疲れが溜まってこ
 っそりダウンしてい
 るのだから。


 二人でゆっくりと、
 ね。



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