最遊記

□困ったときの…
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「なんて言うか…。初めて会った気がしませんね。」


奴は俺の顔をまじまじと見てそう言った。


「…あ?」


とりあえず、瞳孔が開いていないかチェックしてやる。


…大丈夫そうだ。


「初めて、会った、気が、しませんね。」


「…聞こえている。」


「そうですか」


「………。」


ふにゃりと俺に向かって笑いかける。

目元のほくろに思わず目がいった。


すると、それに気付いたのか奴は焦ってほくろを片手で隠す。


「やめてくださいよ、恥ずかしいじゃないですか。」


そう、奴は泣き黒子を見られるのが、嫌いだったんだ。


かっぱが飲んでた時に言ってたっけな?


「でもほんと、あなたとは初めて会った気がしない。


もしかして、前世で恋人だったのかも…。」


「………じゃねぇか。」

「はい?」


奴はニコニコと何時もより高めの声で聞いてきた。

いつもはもっと低い声で、言葉遣いも荒いくせに。


「昨日も一昨日も会ったじゃねぇか。」


「………へ?」


キョトンと俺を見つめる。


…どうやら、悪ふざけではないらしい。


空になったマルボロの包みをクシャリと潰し、

情けなく触覚をたらし落ち込んでいた悟浄の姿を思い出した。



深いため息がでる。




「…記憶喪失、か。



めんどくせぇ。」


ふと、奴の目線が片手でくしゃくしゃにしたマルボロのパッケージに注がれていることに気付いた。


「赤が、好きか?」


根拠も何もないが、とりあえず問いかけてみる。

「赤、好きです。良いですよね、赤って。なんかこうスーッて感じです。」


「ふん、」


…だがまぁ、そう深刻に考える必要はなさそうだ。









「やっぱり、どこかであってませんか??」


「知らん。」


「じゃあきっと運命ですよ!運命!」


「…貴様の運命の相手なら、隣の部屋でしょげてるぞ。」


「へ?」





end.

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