最遊記
□コーヒー
1ページ/1ページ
それは私が休憩中に、
一人で湖を見ていた時でした。
「何を見ているんですか?」
突然現れたのは、
お仲間の猪八戒さん。
「八戒さん!あっ、ありがとうございます。」
八戒さんが、はい、といつもの笑顔で私に渡してくれたは、茶色のマグカップに注がれたコーヒーでした。
「綺麗な湖ですねぇ。」
「はい、さっき魚が跳ねてましたよ。」
「それは、悟空に教えたら喜びそうですね。」
八戒さんは、自分の分のコーヒーを飲みながら澄んだ湖に見とれているようでした。
すかさず私は八戒さんから渡されたコーヒーに視線を移し、
八戒さんに聞こえない程度にため息を一つ。
……いえない、
私はコーヒーが飲めないなんて事を。
こんなのただの黒い苦汁じゃないか!
どこか美味しいんじゃい!
っというのが私の本音なんですが…
初めて八戒さんにコーヒーを煎れてもらった時、
せっかく、煎れてもらった物を返すのは悪いと思い、無理して飲んでしまって、
それから言うタイミングを逃してしまい、私は毎回出されたコーヒーの苦味を我慢して、一気に飲むようにしているのだ。
今回も一気飲みしようと覚悟を決め、
カップに口を近づけ…
…………ゴクッ!ゴクゴク
プハッ!
よし、今回も飲みきった
達成感のあまり、涙が出てきそう。(笑)
「美味しかったですか?コーヒー、」
八戒さんが笑顔で聞いてきた。
「はい、とっても!」
私も彼に負けないぐらいの笑顔を反射的に彼に返す、
「それはよかった、
今回はいつもよりいい豆を使ったんです。
結構高かったんですよ。この豆、二人だけで使いましょうね?
三蔵と悟浄は、インスタントで十分ですから(笑)」
あっあはは(泣)
お気持ちはとっても嬉しいんですが…。
「僕ね、あなたが毎回美味しそうにコーヒーを飲んでくれるから、とっても嬉しいんです。
だって、
一気飲みするほど好きなんでしょう?コーヒー」
違うんです。八戒さん。大嫌いだから、一気飲みするんです!
「三蔵達も、もう少し美味しそうに飲んでくれたら嬉しいんですがね〜」
「……あの、八戒さん、そのぉ、実は私…コーヒーがn
「まさか!今更コーヒーが飲めないなんて言わないですよね!」
!!!!!!!!!!
「………まさか八戒さん!こんだけ飲んどいて今更……あっあはは(泣)」
「ですよね?今更そんな事言われてもねぇ?あっそういえば、僕この前行った街で、豆をすり潰す道具買ったんですよ!
毎晩、夜な夜な皆さんの為にとゴーリゴーリと、コーヒー豆をすり潰しているんです。」
今、確かに、
「そっ、それは凄いですね。」
今、確かに、
八戒さんの笑顔が黒くなってました!!(泣)。
もしかしてあの方、
私がコーヒー飲めない事知っていながら、気付かないフリをしていたんじゃ…
「おや、
今更気付いたんですか?」
!!八戒さんに心の声を読まれた!?
ていうか、知ってたんですか?!
「僕、あなたが無理してコーヒー飲む時の顔が大好きなんですよ(黒笑)。眉間にシワ寄せて毎回飲んでくれるのが嬉しくって嬉しくって
……まさか、残すなんて有り得ないですよね?
ぼ・く・が・、淹れたコーヒーをですよ?」
そう言って彼はどこから持ってきたのだろうか、コーヒーのお代わりを唖然としている私に渡し、黒いオーラを出しながらどこかに行ってしまった。
私は片手に八戒さんに渡されたコーヒーを見ながら、呆然としていた。
八戒さんって、こんな人でしたか!?
end
いいえ違います(泣)