頂き物

□キャンプ
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いい加減、ゴロゴロする休暇に飽きてきたケロロ。
退屈しのぎにテレビのチャンネルを変え続ける。
「どこも同じような番組しかやってないし」
頬を膨らませながら、チラリと側に居る青い髪の恋人を見る。
華奢な身体を強張らせたゼロロは、少しだけ彼との距離を取る。
(警戒されてる)
退屈のあまり、ケロロが悪戯を仕掛けるのは既にお約束となっている二人。
素の時は鈍いゼロロも学習している。
(まあ、その警戒を潜り抜けて仕掛けるのが楽しいんだけどね)
自然に綻ぶ口許。
ゼロロが、読んでいた本と共に更に距離を取る。
どうしようかと思案している時にテレビに鮮やかな紅葉の風景が映った。
黒い瞳が釘付けになる。
「これだ!」
「へ?」
唐突な叫びにゼロロが、キョトンとした表情で彼を見る。
勢いづいて立ち上がったケロロは、人差し指で天井を示す。
「秋の紅葉見物キャンプに行くであります!」
休暇中にも関わらず、出る軍人口調。
「キャンプって・・・・・今から?」
「もちろん! 早速、準備であります!」
脱兎のごとくケロロは、家を飛び出す。
「・・・・・いってらっしゃい」
見送るしかないゼロロは、開けっ放しの玄関に言葉をかける。
その後、肩を落として深々と溜め息をつく。
こういう時の彼の行動力は、人知を超えたモノがあるのだ。
ケロロの思いつきに確実に巻き込まれる赤い髪の幼馴染みと彼の恋人を憂いた。





「何で、こういう事になるんだよ」
美しい紅葉に彩られた川岸に佇むクルルは、側に居るゼロロを睨む。
「ごめんね、クルル君」
何も悪くないはずの先輩は、すまなそうに頭を下げる。
溜め息をつくクルルは、剣呑な瞳で元凶を睨んだ。
「やっぱり、キャンプは川原で焚き火して御飯作るべきだよね♪」
キャンピング・カーから薪を出すケロロ。
「焚き火じゃなくて釜戸だ」
適当な台詞をギロロが訂正する。
「どっちでも良いじゃん。
 外で御飯作って食べる事には変わりないんだからさ」
機嫌の良いケロロは、気にも留めない。
「釜戸の作り方、覚えているんだろうな」
「嫌だな〜ギロロ君。
 俺が覚えていると思う?」
赤い髪の幼馴染みの額に青筋が浮かぶ。
持っていた薪をケロロに押し付けて彼の顔面に人差し指を突きつけた。
「料理ができる釜戸を作れ。
 できなかったら、貴様の夕飯は抜きだ」
「え〜〜〜〜〜!」
「料理は、俺とゼロロに任せると言ったのは貴様だろう。
 美味い飯が食いたかったら死ぬ気でやれ」
黒い瞳が辺りを彷徨う。
「クルルには、何もさせないという条件であいつを引っ張ってきたはずだ。
 手伝ってもらおう等とは思うな」
「うっ」
逃げ道を塞がれたケロロは、頬を膨らませる。
「分かったよ! やれば、いいんだろう!
 やればっ!!」
腹立たしげにギロロの側を離れる。
「ギロロの鬼!」
振り向いて悪態をつくことだけは忘れない。
「・・・・・どこのガキだ? アレ」
呆れ顔のクルル。
「はっ、ははは・・・・・」
フォローできないゼロロは、乾いた笑いを零すしかなかった。
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