頂き物
□ギロドロ(ゼロ)お泊まりもの
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がちゃがちゃ、ガチン。
掃除し終えた銃をまた組み立てていた時ふ、と甘い香りが鼻をくすぐった。
「?」
見ると、横に置かれていた小さいケーキ。更に少し離れた所から、「ゼロロ」がこっちを見ていた。
幼い頃の、「これをして嫌がられないかな」「あれをしたら、嫌いになっちゃうかな」とおどおどしていた彼を思い出して、思わず笑ってしまう。それから手招きをして
「来い。危ないのはもう終わったから、ココにいていいぞ。」
初めて、「ゼロロ」が笑った。
「・・・・なんで、俺のところなんだ?」
複雑な表情のまま、ギロロが声を潜めて言う。相手は、ケロロ。
「だぁって、ドロロはタダでさえ果たし状とかしょっちゅう貰ってるしこのまま外に出したら敵性宇宙人のいいエサでありましょう? 小雪殿も混乱するだろ・・・。そんで、 基地内に部屋も用意したけど、何かこっちに来たがるんであります。」
彼も声を潜めながら話す。
彼らの後ろでは、テントの中で枕と毛布を準備している「ゼロロ」。仔猫に「お邪魔します」とお辞儀している。その様子をみては、基地の中で寝ろと追い出せなくなってしまう。
「ま、テントの中でも今のドロロの大きさなら窮屈じゃないでしょ?今日一晩、よろしく頼むでありますよ。」
極め付けに、笑顔で無責任に肩を叩かれてはどうしようもなかった。
もう随分遅い時間で、テントの中で「ゼロロ」は眠そうにしている。ため息をついて、焚き火を消してからギロロもテントの中に入った。
いつもは全部消すランプも、「ゼロロ」が怖がるので灯りを絞って小さい光にする。「ゼロロ」の横に寝転がると、彼はもそもそと擦り寄ってきた。
「・・・・・ギロロ、君。」
「うん?」
「僕、この帽子・・・・。アサシンになれたのかな。」
ヒラヒラ、帽子の布を持ち上げてみせる。
記憶の中では、きっと原っぱで夢を語り合った頃の「ゼロロ」なんだろう。
「あぁ。立派なアサシンになってるぞ。」
「ほんと!?」
がば、と毛布を跳ね除けてゼロロが起き上がる。眠くないのか、とギロロも起きて向かい合わせに座った。
「じゃ、じゃあ。僕はギロロ君やケロロ君を守れてるかなっ。
きちんとできてる!?」
目をキラキラさせて、懸命に尋ねてくる姿は全部一緒だ。頷いてやると、嬉しそうに笑って抱きついてきた。
「嬉しいな!僕にもできるんだね!!」
「お前のおかげで随分助かってるぞ。」
言いながら頭を撫でてやると、「ゼロロ」の顔が赤く染まる。
パッと離れて、ギロロを見上げてペコリとお辞儀をする。
「あのね、今日はありがとう。」
「?何もしてないぞ。」
首を傾げると、「ゼロロ」ははにかみながら小さい声で話しはじめた。
「ギロロ君が、どんどん銃を綺麗にしてるの見てて楽しかった。
一緒に食べたケーキもおいしかった。 ここのお庭から見た空が、とっても綺麗だった。 ギロロ君のおうちに、ケロロ君と一緒に『合宿』しに来たみたい。」
まぁ、前線とはいえ、今はココがギロロの居住地。
「ゼロロ」にしたら幼い頃にした泊まりっこみたいなものなんだろう。
「そうか。良かったな。 さて、明日は朝一番でクルルの所へ行こう。 あいつの事だから、修理は終わってるだろ。」
「はい!」
また毛布をかけてやると、「ゼロロ」は素直にクッションの上に寝転がった。その横に仔猫が擦り寄れば、その暖かさと柔らかさからすぐにうとうとし始める。
続いてギロロもまた横になった所で
「ん〜・・・ギロロ君・・・。もう1個聞いてもいい?」
半分寝言みたいに、「ゼロロ」が呟く。幼い頃、眠いくせに皆と遅くまで話したがった彼を思い出して苦笑した。
「なんだ?」
できるだけ優しく返してやると
「大人の僕は、ちゃんとギロロ君のこと好き?」
・・・・・・・・・・・・・・。
すぅ、すぅ。
「・・・あっ!?」
一瞬、いや、結構な時間だったかもしれない。
思考回路ごとガチガチに固まっている間に、「ゼロロ」は眠ってしまった。ボリボリ頭を掻いて、彼を起こさないようにそっと起き上がる。
そぅっと外に出て、消したばかりの焚き火にまた火種を入れた。
暫く、爆ぜる火の粉を眺めていたが頭の中は先ほどの「ゼロロ」の言葉でいっぱい。
「・・・・・・・・つまりアレは、そういう意味か?」
幼い頃から、ずっとずっと自分の片思いだと思っていたけれどもしかして実はとっても遠回りだったのでは。
「いやだが、あいつは小さい頃から何でも友情とごっちゃに話すから・・・。」
そうだ。それで何度期待を外されたか。
いやでもしかし。
考えながらどんどん枝葉をくべていくギロロを、背後から見るのは仔猫だけ。
「にゃぁ・・・。」
呆れたように小さく鳴いて、彼女はテントの中へ戻っていった。
ジーザス!
時計の針が元に戻るのならば
彼が眠る前に今すぐ戻してくれないか。
手にも触れられない神様よ。
今夜は、一睡もできない。