頂き物
□ギロドロ(ゼロ)お泊まりもの
1ページ/3ページ
ジーザス!
時計の針が元に戻るのならば
今すぐにそうしてくれないか。
目にも見えない神様よ。
「隊長、言われてたヤツ持ってきたぜぇ。」
別に聞くつもりだったわけじゃない。たまたま耳に入ってきただけだ。部屋の隅で武器を磨きながら、何となく会話の方に視線をやった。クルルが手にしているのはジンセイガニドアレバ銃。また懐かしいものを持ってこさせたものだ、とだけ思って
また意識を武器に集中した時
バキバキ・・・ガターーーーン・・・ッ!!
「うわあぁあぁぁぁあ・・・。」
天井板と一緒に、ドロロが落ちてきた。
「にょー!?」
クルルの叫び声と一緒に、部屋中が虹色の光に包まれる。
これは、まさか・・・・。
暫くは部屋中に埃が立ちこめて視界は全く開けなかった。咳き込みながらもギロロは現状を把握しようと部屋の中心に歩み寄る。
「おい、お前ら無事か・・・?」
声は、低いままだ。いつかのように小さくされてはかなわんと、ギロロは安堵のため息をついた。
「いった〜〜〜・・・。全く、何事でありますかー?」
「めがねめがね・・・。」
煙の向こうから聞こえてくる声も変わりない。
「無事か・・・ん?」
ぴたり。
自分の手を握る、誰か。ケロロやクルルがそんな事をするわけが無く(もしそうなら銃を乱射する)
残る人物・・・は、ドロロ、だけど。
「・・・・・・小さい。」
手が。
明らかに自分のそれよりも小さい手は、まるで子供のもののようだった。
「まさか・・・・!?」
ようやく埃も落ち着いてきて視界が開けてきた。ぎこちなく首を横に巡らせると、そこには
「・・・お、おじさん。ここ、どこですか?」
昔の思い出が蘇る。
泣き虫ゼロロが、そこにはいた。
「いやぁ〜〜〜〜、そこの天井板、腐ってたんでありますかぁ〜。 そういえば、こないだ地下水漏ってたっけね〜。ね〜クルルそーうちょーう。」
「クククーーー。そっすねーたいちょーう。」
ぽっかり開いた穴をぽかんと見上げながら、ケロロとクルルが笑いあう。あくまで、背後は見ないで。
「お前ら、そろそろ現実逃避はやめてくれないか。」
重々しくかけられた声に、笑いが止まる。そろり、と振り向くと
瞳いっぱいに涙を溜めながらギロロにしがみ付くミニドロロと、ちゃっかり抱っこなんてしてあげてるギロロがいた。
「クルル曹長、どゆこと?」
「いつもの事さぁ〜。ぼ・う・そ・う★」
「いいから、早く戻してやれ。ドロロがかわいそうだろ。」
呆れ混じりに銃を指差すと、クルルが人差し指を持ち上げて
「チッチッチ。」
「・・・・ッ!!!」
イラ、と沸点が上がって、怒鳴りつけたい気持ちになるがしがみ付くドロロが今にも泣き出しそうなのでそれはぐっと抑える。
「先輩、顔こわ〜い。ドロロ先輩だって、その泣きそうなのはアンタがそばにいるからじゃねぇの? ククーーーーーッ!!!」
「俺が笑ってる内にさっさとした方がいいと思うが。」
じろりと睨んでやると、クルルは肩をすくめて銃を拾いあげた。
「それがよぉ、壊れちまったみたいなんだよな。明日には直るから、それまで適当に暇つぶしててくれや。」
くっくっく〜・・・・。と、嫌味な笑い声を響かせてクルルはまたラボへ篭りに行った。
いなくなってから、ずっとベルトを握りっぱなしだったドロロの手が離れる。
・・・・これは、クルルに怖がってたんじゃないのか?呆れながらぼんやりと思っていると、
「あの、おじさん達は誰ですか?」
「おじ・・・。」
「おじさん!?ドロロ、どしたの!?
頭も打っちゃったわけ!!?」
ケロロも食いついてきた。
そう、さっきからドロロはギロロ達の事を「おじさん」と呼ぶのだ。
「ドロロ?ぼ、僕、ゼロロって言います。 ここ、どこですか?ケロン星?」
「・・・・・・・・・あちゃあ・・・。」
「記憶ごと・・・か・・・。」
「?」
首を傾げる仕草は、そのままなのに。
「えぇー!?ケロロ君にギロロ君なのー!?」
「そそそ。チミも本当はもう我輩たちと同じ位大人になってるんだけど あの黄色いの・・・クルルね。アイツの発明でね、 ちょーっと子供になっちゃってるんだよネ★」
「は・・・はぁ・・・。」
こういう時、混乱するんじゃないかとか理解できないだろうとか、そういう気遣いが一切無いケロロの説明はある意味勇気があった。
あんまりズラズラと話していくので、「ゼロロ」に疑問を抱かせる時間も与えない。
「でも、明日には戻るらしいから適当にペコポンで遊んでるといいでありますよ!」
そう言って、さっさと自分はガンプラ作りに入ってしまった。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
チラ、と盗み見ると
きゅ。
心細げに、ギロロの手を握ってくる彼がいた。
きゅ、きゅ、きゅ、きゅ・・・・。
キラキラ、磨き上げられる武器。
きゅ、きゅ、きゅ、きゅ・・・・。
キラキラ、じっと見つめる水色の瞳。
(や・・・やりにくい。)
所変わって、テントの前。
何も言わずとも、「ゼロロ」は後を付いて来て武器を磨くギロロの手つきを感動の眼差しで見つめている。
お次は、武器の解体だけど・・・。
「おい。危ないから、あっち行ってろ。」
「ドロロ」なら気にならないそれも、記憶まで後退している「ゼロロ」を傍に置いておくのは何だか危険な気がした。だが、「ゼロロ」は危険なのすら分からず
「あ・・・ゴメンナサイ・・・。」
しゅん、としてリビングへトボトボ歩いていってしまった。
夏美や冬樹には事情をもう話したらしいから、中にいる方がいいんだろうがちくちくと心を刺すのは何故かどうしてか罪悪感。
がしゃん。がちゃがちゃ。ゴトン。
チェンバーを確認しながら、ふと解体する手を止めてリビングに視線を移した。
「うわ〜、ドロロ、本当に小さくなっちゃったんだねー。 すごいやー!すごいやぁーーー!!!」
「え、あの、その・・・あ・・・。」
「冬樹、驚いてるでしょー。
大丈夫よー。私達もオトモダチよ。ね!」
お菓子を出してもらっている彼を見て、一安心。