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□jealousy・じぇらしいー・jealousy!!!
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特になんでもない、日常。


今日、ここ帝光中も一通りの授業が終わり、ぞれぞれの部活へと駆け出していた。


もちろんバスケ部も例外ではなく、練習が始まろうとしていた。


しかし。


普段と違うところがあった。


妙に張り切っている少女、帝光バスケ部マネージャー色無つばさの存在だった。














練習も中盤に入り、一度休憩が取られることとなった。


「各自休憩」


そう、赤司の口が動いた瞬間から、マネージャーは仕事の本領発揮となる。


みんなにドリンクや、タオルを次々と渡していく。


いつもならば、休憩に入ったらすぐに、黄瀬がつばさへと飛びつくが、その黄瀬の様子も変である。


「今日は色無さんの元にすぐ行かないんですか?」


「あーうん今日は我慢っス」


「はぁ・・・?喧嘩でもしたんですか?」


「いや、そんなんじゃないんスけど・・・」


黒子に対して、歯切れ悪く話す黄瀬。























黄瀬とつばさは部活公認で付き合っていた。


2人のルールとして、お互い練習や仕事はちゃんと行うように決めていたらしいので誰も文句は言わなかった。


しかし、バカップルすぎて周りから白い目で見られては、いた。


休憩に入ると、すぐにつばさの元へ向かう黄瀬。


仕事の邪魔をしないようにつばさの後ろを付いて歩く姿は、まるで犬のようだった。


















「はっきりしないですね」と黒子が言うのと同時につばさが2人の元へやってきた。


「はい、黒子君。お疲れ!」


いつも通りの笑顔。


じゃない。


いつもより、優しめの笑顔。


「あれ、黒子君。手ケガしてるよ!」


そう言うといつも以上に強引に「手当、しなきゃ」と黒子を引っ張る。


その時、黄瀬とつばさは目が合い・・・。


つばさは黄瀬にニヤリとした笑みを返したのだった。























「はい、これで大丈夫かなっ!」


「たいしたケガではありませんでしたが・・・。ありがとうございます」


少し血が出ていた黒子の手に、丁寧に消毒をして絆創膏を貼ったつばさ。


「いえいえ。でもこの手は、みんなに絶妙なパスを出す手でしょ?大切にしなきゃ、ね?」


そう言って、ニッコリと微笑む。


普段の彼女からは想像も出来ないほど、優しい微笑み方だった。























その後も、いつも以上に紫原にお菓子を与えたり。


緑間のシュート練習後のボール拾いを率先して行ったり。


青峰、赤司を優先してドリンクを配ったり、スコアを付けたり。


どんなことも、いつも以上の微笑み付きで行っていた。


その度に、つばさは黄瀬の方を見て、「私にも出来るんだから!」と言わんばかりの誇らしげな顔をしていた。






















「おい、黄瀬」


「なんスか、緑間っち」


すべての練習が終了し、下校の準備に入る。


ジャージから制服に着替えるために、全員が部室に入っていた。


「今日の色無は何を考えていたんだ?」


「あぁ、あれっスか」


いつもと違う様子だったつばさ。


全員が気になっていたようだった。


何がおかしいのか、黄瀬は「くくっ・・・!」と笑っている。


「ヤキモチ、っスよ」


「や、ヤキモチ?!」


「そーっス。俺がモデルで、色んな子に微笑んでるのが気に食わないらしくって。それなら私もって部活前に意気込んでたんスわ」


「あんな風に黄瀬君以外に微笑む色無さん、初めて見ました」


黒子も途中から話に入り込んできた。


「他の人にあの笑顔を見られるのが嫌だ、とかないんですか?」


「んー。俺、好きな子はイジメたいタイプなんで、泣き顔の方がグッとくるっス!」


・・・全員がため息を漏らしたのは言うまでもない。







jealousy・じぇらしいー・jealousy!!!







(絶対、涼太にもヤキモチ焼かせてやるんだから!)


(今日、俺ん家誰も居ないし誘っちゃおっかなー!)


「さ、帰ろっか!つばさっち!」


「あ、涼太、待ってよー!」


・・・帰りには、いつものバカップルだった。

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