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□クラスメート以上、友達未満?
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「いやー、持つべきものは友達だわっ!」


そんな大声が秀徳高校、1年生の教室に響く。


「朝からうるさいのだよ」


そんな声に顔をしかめるのは、バスケ部で有名な緑間真太郎。


そして、その大声を出したのは同じクラスの色無つばさである。


「だってだってだってさー!あたし、感激なのだよ!」


「・・・飴をやっただけでか?」


「朝ごはん、食べてないんだもん!」


「つばさちゃん、これもあげるよ!」


「俺もコレ、あげるわ!」


「えー!みんなありがとう!友達友達ー!」


つばさは持ち前の人懐こさで、クラスみんなと隔てなく付き合いがあった。


・・・ただ一人を除いては。


「オレもコレ、あーげる!」


そう言って、高尾がつばさの手に飴を落とす。


「あ・・・ありがとう、さすがクラスメート」























「何でオレには“友達”って言ってくれないんかなー?」


「そんなの、オレが知ってるはずないのだよ」


昼休みに高尾が緑間に聞く。


ちなみにつばさはお昼休みになると、すぐに購買に向かって走ってしまった。


「クラスのみんなには気軽に“友達”って言ってるのに・・・」


高尾の口からはつばさの不満ばかりが出てくる。


ホントの理由を実は知っている、緑間。


しかし、もちろんのこと口止めされている。


「あ、真ちゃん発見ー!」


そんな話をしていると、つばさが購買から帰ってくる。


「真ちゃん、はいこれあげるー!」


「・・・なんなのだよ、これは」


「ん?朝のお返しだよ?」


そう言って、緑間の手の上に飴を落とす。


「あ、高尾にも。はい」


高尾の手に飴を落とそうと手を伸ばしたが、高尾の手に飴が落とされることはなかった。


「え?」


つばさが伸ばした手を、高尾は捕まえていた。


「な、な、な、なに?!」


「真ちゃん、オレ直接こいつに聞くことにするわ」


「そうか」


「あ、アレ?あたしの存在無視?」


緑間と高尾で話しが終わると、高尾はそのままつばさを引っ張って教室を出ようとする。


つばさは助けを求めようと、緑間を見るが「がんばれ」と口パクで返されてしまった。

































「えっと、何でしょう?」


高尾に引っ張られるようにして、屋上まで到着する。


「・・・ねぇ」


しばらくの沈黙のあと、高尾が真剣な顔をしてつばさを自分の瞳の中に捕らえる。


「何でオレはいつまでたっても“クラスメート”なの?」


「・・・へ?」


間抜けな声を出すつばさに、少しづつ苛立ってきた。


「他のやつには簡単に“友達”って言うのにさー・・・なんで?」


いつも教室で見せるおどけた様子は、今の高尾から感じられない。


バスケをしているときのような、真面目な顔だった。


そんな顔を見せられて、つばさもいつもの調子を出せないでいた。


「あっと、えーっと・・・」


「オレって、そんなに嫌われてるんだ?」


「ち、違うっ!」


急に出た大きな声に、つばさ本人が驚いていた。


もちろん、急に大きな声を出された高尾の目も大きく見開かれていた。


「だ、だって、高尾とは・・・」


「オレとは?」


「た、高尾のこと、“友達”って言ったら友達以上になれないじゃん!!」


「・・・は?」


顔を真っ赤にして叫ぶつばさに対し、今度は高尾が間抜けな声を出す。


「はっ?・・・えっと・・・」


赤い顔をして睨むつばさを見て、高尾も顔が赤くなる。


「そ、そういうわけだから、覚悟してよね!高尾っ!」


そう言うとつばさは、走って屋上を出て行ってしまった。


「ま、マジかよ・・・!」













クラスメート以上、友達未満?











「真ちゃーん!!わーん!!」


「お前は相変わらずうるさいのだよ」


「緊張したー!緊張したのだよっ!」


「そうか」


「そうか・・・じゃないよ!本人にいろいろ言っちゃったよー!!」


それからの2人は、また別のお話。

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