short

□萌袖丈イミテーション
1ページ/1ページ

あたしは今、悩んでいます。

「だから、なんで俺がそんなこと教えないといけないの」

「そ、そこを何とか!」

「はぁ・・・。大体、なんで俺なの?」

「だって、松岡くんが・・・」

「まっつんが何?」

「”ゆっきーってあざといよな”って・・・」







あたし色無つばさは今、恋をしています。

それは同じアパートの上に住んでいる、松岡くんに。

初めての出会いは、ほんとに偶然で。

ちょっと大きな家具をネットで買って、配達してもらったは良いけれどその後のサービスはついてなくて。

家の中に入れようと奮闘しているところを助けてもらった。

その時の眩しい笑顔・・・!

その日から、あたしの姿を見かけると声をかけてくれるようになった。

だからあたしも、何気ないことでも声を掛けるようになった。

松岡くんは楽しそうに仕事のことや、サバゲーってものについてを教えてくれた。

そんな松岡くんに、すぐに惹かれてしまったのは自分でもすぐにわかった。

松岡くんの話には、いつも同じ人達の名前ばかり出てくる。

一人目が男子高校生の立花くん。

とっても真っすぐな人で、サバゲーでも凄い威力を発揮してくれるって言ってた。

そして2人目が今あたしの目の前にいる、雪村さん。

辛い時にはいつもそばにいて、支えてくれたって言ってた。

そんな話をアパートの階段前でしている時に、たまたま雪村さんと遭遇した。

ゆったりと喋る人だなーとしか思っていながったが、よく見ると。

萌え袖。

松岡くんとの会話も、駆け引きが上手くてこっちまでドキッとしてしまう。

雪村さんが行ってしまった後に、松岡さんが一言。

「ゆっきーってあざといよな」

その言葉を聞いて、雪村さんにはあたしの師匠になってもらおうと決めてここにいる。


















「それ、まっつんが言ってたの・・・?」

「は、はい!そうです!!だからあたし」

「ちょっと待って、その話詳しく教えて?!いつ?!いつなの?!まっつんがいつ俺のことあざといなんて言ったの?!」

何故かニヤニヤしながら質問でまくし立ててくる雪村さん。

「で、でも!お伊達になんか乗らないんだからね!まっつんは俺のだし・・・!」

ツンデレも出来るとは、なかなか手ごわい相手になりそうだ。

「そこを何とかお願いします!あたしに、その萌え袖のあり方と会話の駆け引き術を教えてください!」

そもそも男の人にこんなこと聞くとは思わなかったけど、男の人目線で聞けば間違いなしだよね?

そんなよこしまな思いを持ちながら雪村さんにお願いしたけれど・・・。

「もしそれで・・・まっつんが色無さんになびいちゃったら、俺・・・」

な、泣き出したー!!

どうすれば良いのかわからず、ただオロオロとしてしまう。

そ、そんなにダメだったのだろうか?!

「えっと、ただ真似させて欲しいというか、それだけなんです・・・!」

何だか、あたしも泣きたくなってきた。






















「・・・お前ら、何やってんだ?」

「まっつーん!!!」「松岡くん!!」

後ろから急に声がした。

松岡くんだ。

「色無さんが俺をいじめるのー!」

「ちょっと、雪村さん!誤解を招くようなこと言わないでください!」

「俺、怖くて怖くて」

「びっくりしたのはあたしの方ですからー!!」

本当に泣きたくなったのに。

そんなあたしの気も知らないで、雪村さんは話を進めていく。

松岡くんも、雪村さんの話しにしっかりと耳を傾けている。

・・・雪村さん、話しに着色しすぎなんですけど。

それを止めに入って、あたしと雪村さんで言い合いになってしまう。

ふと、横目で松岡くんを見ると。

「ま、松岡さん?」

微笑んでいた。

「ん?いや、つばさとゆっきー、仲良いなと思って」

「?!」

そ、そんな!

「あたしが一番仲良くしたいのは、松岡さんです!!・・・あ」

勢いに任せてすごいことを口走ってしまった。

横から雪村さんの舌打ちが聞こえたが、今は気にならない。

別に告白ではなかったが、返事次第ではこれからの距離が変わってくると思う。

自分で言っておいて、今更ドキドキしている。

松岡くんは相変わらず、微笑んでいた。

「そんな風に思ってくれて、ありがとな!!」

あたしの気合の入った叫びも、まるで向日葵のような笑顔で返されてしまった。

さすがホスト。

横で笑っている雪村さんに八つ当たりのパンチをカマして、今日の戦いに幕を閉じる。






萌袖丈イミテーション






「まっつんの攻略は簡単そうで鬼門なんだよー?」

「なんで嬉しそうなんですか!雪村さんがさっさと師匠になってくれれば・・・!」

「だから言ってるじゃん、俺のまっつんなんだって」

「そう言えば雪村さん、後から考えたんですけど松岡さんの姿を確認して泣き演技入れてきましたよね?!」

「あ、バレたー?」


そのあざとさ、真似させて頂きます!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ