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□すれ違い
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「パンドラ?…久しいな」

「ユダ殿…
…花を摘みに来たんですか?」

ユダはパンドラと、森でばったりと出くわした
ユダの手には花が握られていて、パンドラは目敏(めざと)く指摘する

「ああ…まぁ、な…
そういえば昔は一緒に花を摘んだよな
お前が教えてくれた知識は今も役に立っているぞ」

「ふん…
花から絞った香油なんて、大した役には立ちませんよ」

パンドラは「失礼します」と短く言うと、踵を返した

しかし長いローブの裾を踏んでしまい、バランスを崩して転倒しかける

「っ!?」

「…大丈夫か?」

慌ててユダが体を支えた

「ユダ殿、すみま…」

―バタッ

パンドラの言葉を物音が遮った

「…、ユ……っ」

シンだ
物音はシンが本を落下させた音だった

「……っ!」

「!?
待てっ! シン!?」

何も言わずに駆け出すシンに声を掛けるも、走り去ってしまった

「…すみません
何か勘違いされたようですね」

パンドラはめずらしく素直に詫びてきた
言葉にいつもの棘はない

「必要ならば、私からも誤解を解きますから……早く追い掛けてあげて下さい」

「ああ…すまない」


* * *
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