平凡無縁日記。

□第0幕 神頼み
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 皆さんは“神頼み”と言うものをしたことがあるだろうか。


 あたしは無い。いや小さい時とかにした事があるのかもしれないけど、記憶にないのでとりあえず無い。


 別にそれを否定するわけじゃないんだけど、なんて言ったらいいのかな……そーそー、人間っていざとなったら神頼みってしたくなるじゃない? それが本気でやるか、それとも軽い感じの願掛け程度か。それは人それぞれだと、当たり前だろうけどあたしは思う。


 でも神頼みをして、本当にそのおかげかどうかは定かではないけど、もし叶ったら儲けモンだよね。


 そー言うあたしは、神頼みなんて気紛れだろうが何だろうが、もう二度とするものかとつい最近心に決めた。


 それは何故かって? 神様は気紛れだし、自己中だし、それに……ウザイから。






第0幕 神頼み






「姉貴! 早くしないと遅刻すんぞ!」

「フゴゴッフゴフゴゴ!」

「口の中にあるもん飲み込んでから喋れ!!」


 呆れ口調で弟――五樹(いつき)に言われ、あたしは素直に口の中にあるパンを飲み込んだ。


「で?」

「えと〜〜…………………何だったっけ?」

「聞くな、てかその歳で耄碌してんじゃねーよっ」

「してないよ! ただスポンッて頭から抜けちゃっただけだよ!」

「それが耄碌って言うんだよ!!」


 さっきから耄碌もうろくって煩い五樹をギッと睨み付け、言いたかったことを思い出す。


「そーだ! 受験頑張れって言いたかったんだ!」

「何だそんな事かよ」

「何だじゃないじゃん! 今日は運命の受験の日何だよ五樹君! もっと気合い入れよーよ!!」

「何だよ五樹君って。つーか姉貴が気合い入れたってどーしよーもねーだろ。受けるのはオレなんだし」

「だけど……」

「心配ねーよ。ぜってー受かるって」


 あたしを安心させようとしているのか、笑いかける五樹にポケットからお守りを取出し渡す。


「五樹はい、お守り」

「は? 買ってきたのか?」

「んーん、あたしが作った! 大丈夫、ちゃんと塩も入ってるから!」

「何が大丈夫なんだよ! てか塩入れんな! なんか振ったら塩が落ちてくるんだけど!! 縁起悪いもん渡すな塩姉貴!!」

「えっ縁起悪い!? 酷いっ! 折角夜業して作ったのに!!」

「こんなモン夜業して作……ってオイ!! もうこんな時間じゃねーか!!」


 五樹はふと時計を見ると、焦った表情をしあたしの背をグイグイと押す。


「ほらっいい加減出ねーと遅刻するぞ!!」

「へいへーい」


 あたしは気の抜けた返事をし、カバンを持ち玄関まで五樹に押されていく。


 ちなみに五樹の試験時間まではまだまだあるので、家で家事を少しやってから行くらしい。


「じゃー行ってくるけど、ちゃんと試験前に塩は舐めなくちゃダメだからね」

「何でだよ! 舐めるかんな塩っぱいモン!」

「えぇー……じゃあ塩飴」

「変わんねーだろ! いいからさっさと行けこの塩漬け!!」

「ついに姉貴って言わなくなったよ…しかも塩漬けって……食べろって事?」


 ため息を吐きドアを開けようとしたが、くるりと五樹の方へ振り向いた。それに五樹は首を傾げる。そんな五樹に、







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