平凡無縁日記。
□第0幕 神頼み
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あたしの発言にお兄さんがブーブーと文句を言っているのが聞こえるけど、無理矢理遮断した。
「それ…ウソじゃ…ないですよね……?」
「当たり前や、神様はウソは吐かへん!」
胸を張り言うお兄さんに、あたしは深呼吸をし息を吐く。そして、
「やった―――!! おめでとう五樹ー!! 万歳バンザイばんざーい!!」
自分の事のように大喜びし、その場で万歳三唱をし始めた。
それを微笑ましい笑顔で見ていたお兄さんは、ふいに眉間に皺を寄せ、意を決したように口を開いた。
「ただなあ〜、その未来になるにはちょっとした条件があんねん」
「ばんざー……へ?」
その言葉に、万歳を止めお兄さんを見つめる。
「条件?」
「そや。その未来にするには勿論弟さんの実力もあるが、オレが弟さんに付いてくる陰の気……簡単に言えば不幸を招くモノを払わなあかんねん。が、オレにはそれを払うための力がもうほとんどないんや」
「なっなっなっ! 何ですって!!?」
あたしは絶叫し、お兄さんの肩を掴み掛かる。
「何でないんですか! だってあなた神様ですよね!? 見た目バカなお兄さんだけど一応神様なんですよね!!?」
「バカって…一応って……。ゆーたやろ、最近は神を信用する人間がめっきり減ってしもうたって。神を信用する人間が減るに比例して、オレの力も減っていくんや。神の力の源は、人間の信用する心、信仰心やからな」
「じゃあ……このまま行ったら……」
「弟さん、合格せーへんかも知れんな」
そんな他人事みたいに言うお兄さんの肩をさらに強く掴み、ガクガクと揺さ振る。
「冗談じゃないよー!! お賽銭入れたじゃないですかー!! 塩入れたじゃないですかー!!」
「塩は余計じゃー!! 賽銭だけじゃダメやからこんなことゆーてるんや!!」
「ダメって……100円と塩も入れたのに……、じゃあどーすればいいんですか!! あたし何でもしますよ!!」
「そーや! 嬢ちゃんに協力してもらいたいんや!」
何でもするとは言ったものの、まさか頼みごとをしてくるとは思わずぱちぱちと瞬きをした。
「協力って……?」
「オレの力ははっきり言ってほぼ無いに等しい。が、嬢ちゃんがオレの願いを一つだけ聞いてくれれば、一時的やけど力が戻るんや」
何であたしがお兄さんの願いを聞けば力が戻るのか、神様が人間に願いを聞いてほしいとか終わってますよね、と質問やツッコミをしたかったけど、止めておこう。このお兄さんがダメダメなのはもう重々分かったのだから。
「分かりました、あたしで出来る事なら引き受けます」
「出来る出来る、つーか誰でも出来んねん! サンキューな、嬢ちゃん!」
これも全て五樹の為、誰でも出来ると言っているのだから、簡単なことなんだろう。
「なーに簡単な事や。ちょいとタイムトリップしてきてや」
「何処が簡単なんだこのハゲダルマ!!」
お兄さんはちょっと買い物行ってきて、なーんて軽いノリでとんでもない、そしてぶっ飛んだ話を切り出した。
「ハゲダルマ!? オレまだハゲてないっちゅーねん!!」
「だって将来ハゲそうな顔してるから! そんな事はともかく!!」
オレ将来ハゲるの?!、と本気にしだしたお兄さんに耐えず言葉を投げ掛ける。
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