P4部屋
□アントライオン
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ゆるやかな曲線を描く双丘。
やわらかなその場所に身をゆだねることができたら、どんなに気分が良いだろう。
仕事で溜まった疲れも吹っ飛ばせるに違いない。
惜しむらくは見えそうで見えないこのアングルの妙だけだ。
ここをすこし傾けたら見えるだろうか。
「仕事さぼってエロ本ですか」
突然耳元でささやかれた声に驚いて、思わず二、三歩とびのいてしまった。
「なんだ君か。びっくりさせないでよ」
まだ鳥肌がたったままの腕をさすりながら振り向けば、見慣れた顔(本当は見慣れたくない)がたたずんでいる。
素なのか計算なのか、女受けしそうな澄ました雰囲気がいちいち癇に障る男だ。
手元の本をのぞき込んで来るもんだから、慌てて閉じると棚に押し戻した。
「足立さんにこういうイメージがありませんでした」
「僕をなんだと思ってたの?溜まるもんは溜まるよ。第一、未成年はだめでしょ、このコーナー」
警官の前で良い度胸だといってやる。
すると彼はクスリと笑い、銀色の髪が少し揺れた。
(絵になりそうな仕草が映える所にまた腹が立つ)
俺は気を取り直すことにして、別の雑誌に手を伸ばした。
そういや、りせちーの最新グラビアを買いそびれたままだった。
と、どうにかこうにか彼を思考の外に追いやろうとしているのに、わざわざ隣に並んで来るのはなんの嫌みなのか。
一瞬、かぶった猫のことを忘れかけたのは実に不覚だ。
「ねぇ、俺としませんか」
「はぁ?」
何をと聞き返そうと顔を上げると、銀色に澄んだ瞳と目が合った。
「だから、俺と…」