短編集

□禁じられた遊び
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禁じられた遊び

簡単だ。世界の論理なんて至極簡単にできている。
神はより強きものだけを求める。


「なんだい?俺を邪魔するの」
「そうだ。お前には借りがある」

同じ小学生の癖にわざわざ難しい言葉を並べて見せた少年は俺をギロリと睨んだ。
学校の帰り道、無理やり連れ込まれたのは小さな公園だった。ふと彼の後ろに目をやると中学生だろうか、彼より背の高い少年達が並んでいる。
そうか。そういうことか。
力さえあれば世界を支配することができる。極めて合理的な考え方だ。彼はそうやって後ろの少年達をも手懐けたのだろう。
その風格はいかにも頂点を極めた王者の様であったが、見た目の不釣合いな主従には滑稽さが伺われた。
ふんと少年は鼻で笑うとにやりと口の端を持ち上げた。嫌な笑い方だ。
彼はただ合図を送るだけでいい。手を汚すことなど無い。ただ傍観者であればいい。
当事者で無い限り人はドコまでも残酷になれる。

「もう一度試合をしたい」

俺はその一言に驚いた。敗れて尚、彼は己の力の強さを信じている。

何度やっても同じだよと皮肉混じりに答えてやると彼の目つきが怒りに変わった。
こんなことで無駄な時間を費やしたくない。
くるりと身体を反転させると俺はその場を去ろうとした。

腕に強い痛みを感じた。先ほどまで横に控えていた少年にぐいと右の手首を握られている。

「はなせよ」

無理に振り払おうとしたが体格の差は埋められない。びくともしなかった。
後ろで帽子をかぶった少年の笑う声が聞こえた。嬉々とした表情はまるで小動物をいたぶって楽しむかのようだ。
きっと睨みつけてやると彼はもっと大きな声で笑った。彼があごでしめすとぱっと腕は開放された。
そして彼は少年達をつれてその場から去っていった。

ずきずきと痛む腕をさする。痛みはしばらく引かなかった。
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