P4部屋

□アントライオン
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正直この状況は実に不可解だ。
何故俺は男とラブホにいるのか。
何を血迷ったのか。

確かにずいぶんとご無沙汰だということに異論はないけれども、相手を間違っている。
だってどうみたってこいつは男以外の何者でもない。
(その上、好きになれないタイプ)
手慣れた様子の彼に流されるままついてきてしまったせいで……手慣れてる?
いや、ちょっと待てよ。どっちが突っ込まれる側なんだよ。

おい、…まさか。

棒立ちになったままの俺をいぶかしんで、彼は心配そうな表情を浮かべた。

「大丈夫ですか」
「え?あぁ…まぁ、ぎりぎり」

ゆっくり呼吸を整えて、脳味噌をフル回転させる。そして、俺は意を決した。

「ねぇ、その…さぁ…、どっちかが、まぁ…その、何というか女役なんだよねぇ」

冗談めかして笑ってみせる。
ぎこちないが、今の俺にはこれが精一杯だ。

「あぁ、最初は俺でいいですよ」

無表情でさらりと言われたことに唖然とする。
ちょっと、そこはしばらく悩んでよ。
うやむやになった隙に逃げ出すどころか、ついに俺は退路を断たれた。

丁寧な動作で、彼はシャツのボタンを外してゆく。
露わになったその体躯は、細身だがしなやかなラインを描いている。
運動はあまりしていないと自重していた割に、筋肉は整っているのが憎らしい。
均整な顔といい、悔しいが女にもてるのも頷ける。
彼はシャツを脱ぎ捨て、猫のように音もなくするりと俺目の前に躍り出た。
予期せぬ動作に戸惑う隙も与えられず、感じたのは唇の熱さだった。

「ん…」

唇の隙間から侵入する舌。
げぇ、いきなりディープキスかよ。信じらんない。
後頭部を押さえられ、奴のなすがままなのが腹立たしいが、もっと深く奥へと乱暴な所はまだまだ子供のようだ。
離れた時には二人とも息があがっていた。

余裕のない表情、なんだそんな顔もするんじゃない。

ベットに倒れ込むと、彼ははやくとせかす。
でも俺、どうしたらいいかわかんないんだけど。

「やったことないんですか」
「男とやるわけないよ。君と違ってマニアックな趣味じゃないもの」
「女性とも?」
「こ、こんなとこ入れないよ、普通」

ふぅんとひどく腑に落ちないような返事を彼は返した。

「じゃぁ、俺のいうとおりにしてください」

そう言ったかと思うと、ぽいぽいと残りの服を脱ぎ捨てた。
ムードもへったくれもねぇなぁ。
男ってそういうもんだけれども、少しは夢を見させてほしい。

「この潤滑剤を使って、ここ」

彼は事も無げに言うが、今さらだが少し気恥ずかしくなる。

「君ってさ、こういうの経験あるの?」
「すこしだけ」

最近の高校生ってどうなってんの。親が泣くよと言ったら、彼は足立さんって思ったよりまじめなんですねと笑った。

加減がわからないからおっかなびっくり指を這わせる。
ゆっくり動かすと、くすぐったいと彼は言う。
それでも、あぁと吐き出す息は甘くなる。
端正な顔がすこしゆがむ。あぁ、俺は男でもいけるのかも。

「ね、そろそろ…いいのかな」
「んっ…どうぞ…」

律儀に財布からゴムを取り出すのをみて彼は瞬きを繰り返した。

「俺、女じゃないんで大丈夫ですよ」
「いや、そういう問題じゃないから」

うーんと再び彼は腑に落ちないような表情を見せる。

(俺と彼との間には年齢以外にも大きな溝があるようだ)

ゆっくりと彼の中へと侵入する。
苦しげな表情を浮かべている。

「痛い?」
「…大丈夫…です」

それにしても、絵に描いたように理想的な少年にこんな性癖があるなんてね。
女連れで歩いているところを見かけたこともあるから、気分が良くなれればいいのかもしれない。

「足立さん…?」
「あ、ごめん」

ゆっくりと体を動かす。熱い。人の体温てこんなに熱かったんだなとぼんやり思う。
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