□肌寒くなってきましたね
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大合唱していた蝉もすっかり姿を潜めてしまい、アキアカネがふわりふわりと舞うようになった。

昼日中はまだ暖かいとはいえ、夕方にもなると空気もある程度冷やされ吸い込んだ鼻の奥がツンとなる。


(そろそろ衣替えの季節かね)


そんなことを思いながら、銀次郎は日の傾きかけた薄むらさき色の空を見上た。




「おソラさんじゃねぇか…」



真っ赤なトンボの群れの中に、鮮やかな反対色の青が混じってふわふわと戯れている。



「おーい。おソラさんよ、何やってんだい?」


ぷかぷかと仰向けで漂う少女がその声に気づいたのか振り向く。



「ああ、銀次郎。コイツらと遊んでたんだ」


そう言いながら、ふわりと地面に降りてきたソラ。


「コイツら、って赤トンボのことかい?」

「赤トンボ…っていうのか?あの空を飛んでいるやつ」

空を指差し不思議そうな顔で銀次郎に尋ねる。

「そうさ。こうやって涼しくなると現れるんだ。秋の風物詩、ってヤツだ…」



…っクシュン!



銀次郎の説明をさえぎるような、
小さなくしゃみがひとつ。




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