野良猫の飼い方

□一緒に寝てあげると懐きます
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いつもよりほんの少しだけ暖かかいそこに、心地よさを感じた自分に嫌悪した。





一緒に寝てあげると懐きます





「最近、寒くなってきたねぇ」


女は膝の上のヒバリを撫でながらそう言った。ヒバリはくあ、とあくびを一つして、また女の膝へ伏せる。
僕はというと、二人から少し離れた場所でヒバリと同じく丸くなっている。もちろん、二人に背を向けながら。


「そろそろ暖房入れようかなぁ……でも電気代がなぁ……」


女はさっきからそんな、どうでも良いことばかり言っている。
見ていないからわからないけれど、どうせ今も微笑みを浮かべているのだろう。ヒバリを見ながら。

たまにはヒバリに嫌がらせをするために僕だって女の膝へ乗ってみようと思っているのだが、いつもヒバリに先を越されてしまう。
(あくまで、ヒバリの嫌そうな顔を見たいだけだ。別に僕は、あの女の傍にいたいなんて思っていない)


「……あ、そうだ!」


女がいい考えが浮かんだ、というようにパン、と手をたたいた。ヒバリはぴくりと反応して女を見上げた。僕もその音に導かれるように女を見る。
ヒバリとタイミングが被ったのが癪だった。


「ヒバリくんとムクロくんも、一緒にわたしのベッドで寝よ?二人ともあったかいから、よく寝れそう」
「……ニャア」
「…………」


ヒバリは僕を一瞥し、嫌そうな視線を向けてから、別に良いけど、と言った。僕は何も言わずにヒバリを睨み返した。


「うん、決まり。……じゃあ、そろそろ遅いし、寝よっか」
「ニャー」
「……ニャー……」


そうだね、とヒバリは返事して、寝室へと歩いていく女の後を追った。女は寝室へ向かう途中で、僕とヒバリ、それぞれのお気に入りのクッションを拾う。
それを持っていかれてしまったので、僕も仕方なく後を追った。


「クッション、どこに置こうか?」
「ニャ、」
「……ニャー」


ヒバリはまた一つあくびをして、どこでもいいよ、と言った。僕も同じく、どこでも、と答えた。
女はベッドに登って脚にふとんをかけると、僕らのクッションを自分の両脇に置いた。


「ムクロくん、ヒバリくん、おいで」


ヒバリが先にベッドに飛び乗り、僕もヒバリとは反対側からベッドに飛び乗った。
女は僕らを片手ずつで一撫ですると、かちりと紐をひいて電気を消し、肩までふとんをかけた。


「おやすみ、二人とも」
「ニャア」
「……ニャア」


おやすみなさい、と言って丸くなればふとんごしに女の体温を感じた。
それは思っていたよりもずっと温かく、別に眠くなんてなかったのに、僕の意識はすぐにまどろんでいった。





一緒に寝てあげると懐きます
((ああ、あいつがいなければもっと気持ち良いだろうに))





うーん、やっぱりお題と合わない……。ムクロ、懐かないからなあ。

ヒバリくんみたいなにゃんこを飼いたいです。






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