【純粋な瞳に対する発言 5題】
□1.キラキラして眩しいんですけど
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その言葉は唐突に投げ掛けられた。
「…意外と綺麗な手をしているんですね。」
「…は?」
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ソレスタル・ビーイングのエージェントである王留美の計らいで、トレミーのメンバーは、ミッションの合間の貴重な休暇期間を、プール付きの豪華な別荘で過ごしていた。
ロックオンは一人トイレに向かい用を済ませ、これまた豪華な作りの洗面台で手を洗っていた。
普段はグローブで隠れている手もこの時は露になる。
全体に細かな彫刻が施された木彫作りの洗面室、大理石で設えたシンク、艶を抑えた金色のコック…総てが一級品。
…やはり、何となく落ち着かない。
コックを捻り水を止め、洗面台脇に備えられているジェットタオルの吹き出し口に両手を入れる。
ブォォッ
と、勢いよく温風が吹き出し、手に付いた水滴を飛ばしていく。
ジェットタオルから両手を引き出し、水滴が残っていないことを確認すると、ジーンズのポケットに突っ込んでいたグローブを取り出し、再び嵌め直そうとした所で、急に伸びてきた手にグローブを奪われる。
「ちょっ…俺のグローブ!」
慌てて振り返ると、
今度はグローブを追いかけた右手を掴まれる。
「…意外と綺麗な手をしているんですね。」
「…は?」
その姿は俺が想像していた誰とも違った。
いつの間に入ってきたのか、ティエリアは俺の手を角度を変えたり掌を返したりしながら、観察を始めている。
洗面室の眩しい程の照明に照らし出され、ティエリアのの髪色はいつもより明るい菫色に変わり、緋色の瞳が透き通り艶めく。
まるで、瞳にルビーを嵌め込んだ様な美しさで、眼が離せない。
「他人に見せられない程酷い手をしているのかと思ったら、普通じゃないですか。地球育ちの癖に肌だけやけに白いんですね。」
「ティエリア、あの〜…」
「何か、ロックオン。」
「…なんつーか…、キラキラして眩しいんですけど…。」
「…何が?」
「お前さんのその眼が。」
「あぁ、ここの照明のせいでしょう。」
「それもあるかもしれないけど…そんなに見つめるのだけは勘弁してくれ…。」
純粋な紅に見入られて、
溶けてしまいそうだ…
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