逆転裁判
□余韻 1
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「これじゃ…年が越せないよ…」
無意識にこぼれた言葉は、
一人きりの事務所に溶けていく。
そう、
今、
僕は一人きり。
ひょうたん湖殺人事件の被告人――
つまり、御剣のことだが、
序審裁判で僕が弁護人を務め、
何とか…無罪判決となった。
その晩、イトノコ刑事の奢りで、
多くの関係者と共に
御剣の無罪を祝った。
本当に楽しかった。
皆の表情も晴れやかで、
僕もつい、飲みすぎてしまう位、
楽しんだ。
『弁護士になって良かった…』
公判を終えた後の依頼者の、
そして周りの人達の表情を見る度に、思う。
いつもなら(といっても数回しかないが)
暫くその余韻に浸って、
まったりと数日を過ごしてしまうのだか、
今回はそういう訳にはいかなかった。