【付き合いきれない 5題】


□1.ハレルヤと猫耳
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目覚めると、いつもよりクリアに世界が見えた。





「…あぁ、そうか。」




それもそのはず。

俺…『ハレルヤ』が、視ているのだから。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




ベッドから上半身を起こし、顎まで届く深緑の前髪を、手で無造作に掻き上げる。

滑り落ちた前髪の隙間から、勝ち気に煌めく金の瞳が覗いた。

部屋の窓を見やると、少しずつ明るさを増す空と海が一面に拡がっている。

「地上…?あぁ、そうか。」

物品補給とメンバーの休暇のため、トレミーは1週間地上に滞在すると、昨夜戦術予報士が話していたのをアレルヤの意識越しに聞いた。

折角の休暇だ。艦内でダラダラと惰眠を貪るのも悪くないが、今は身体が自由に動くのだから、何処かに出掛けてみるのも良い。


いつもの私服に着替え、通路を歩きながら通信用端末で情報を引き出していると、後方から小走りで近付いてくる足音が聴こえてきた。

「お〜い、アレルヤ〜!ちょっとこっち向いてくれるか?」

遠慮の無い人懐っこい声――直ぐにガンダムマイスターのロックオン・ストラトスであると解る。

しかしコイツ…、今日は朝からやけにテンションが高い。

気にはなったが、今はそれよりも、ロックオンの間違いを訂正しなければと振り返ってやる。

「アレルヤじゃねぇ、俺はハレル…ヤ…」

スポンッ

振り返った途端に、ロックオンは勢い良く何かを頭頂部に嵌め込んだ。

「!」

頭頂部からこめかみまで半円状に圧迫感がある。
…カチューシャ?

にしては妙な重さだ。

「おぉ〜!」

俺の顔を、…正確には頭頂部に取り付けられた何かと顔を交互に見ながら歓声を上げるロックオン。

「…おい…俺の頭に何しやがったんだ…?」

「アレ、その反応…ハレルヤか?ま、どちらにしても良く似合ってるぜ、その猫耳。」


「…んだと…!?」

端末の画面をミラーモードに切り替えて確認すると…、かなり大振りな黒毛の猫耳が頭の上に生えていた。

「ふざけんじゃねぇ!こんなの着けてられるか!」

猫耳を掴み、一気に引っこ抜け…ない。引っ張れば引っ張るほど接続部分が頭皮に食い込み、痛みが走る。

「…って、…どうして外れねぇんだよっ」

猫耳に苦戦していると、ロックオンがしたり顔で説明を始めた。

「はっはっは〜☆それはな、ブロードウェイミュージカルの激しい動きにも耐えられる特殊使用の猫耳なんだぜ。クリスとネットショッピング眺めてて偶然見つけてさぁ〜♪」

「…で?」

「で、これはもう買うしかないって感じでさ!…で、買ったは良いが、本当に強靭な接着強度があるのかどうか確かめる方法が無くてさ〜。」

「……で?」

「…で、歌って踊れて曲芸も出来そうな素晴らしい体躯の持ち主で実験することを思い付いたわけだ。」

「………で?」

「さぁハレルヤ!歌って踊って曲芸を披露してくれよっ」

「誰がするかっっ!!」

言うや否や、ロックオンのベストに強引に手をかけ始める。

「な、何すんだよ、ハレルヤ!」

「このふざけたオモチャの拘束を外すリモコン!お前が持ってるだろーがっ、寄越せっ!寄越さないと服を剥ぎ取ってでも奪ってやるっ」

「うわぁ!痴漢!ひーとーでーなーしー!!…あ、今は本当に人じゃなくて猫だった。」




「……テメェ、捨てるぞ。」





「…へ?」





その後、ロックオンを担いだハレルヤが、問答無用でロックオンごとリモコンを海に突き落とし、猫耳を外したとか外せなかったとか…。

それはまた、別の話☆




end
 

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