【付き合いきれない 5題】


□2.ハレルヤと仲間たち(中編)
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「海に落ちて気絶した上に風邪まで引いて…君はガンダムマイスターとしての自覚に欠けている。」

「いやぁ〜…ハハハ。…言葉もございません。」

意識の戻ったロックオンは、寝台の背もたれに背中を預け、上半身を起こしている。

一方ティエリアは、寝台の脇に置いたスツールに足を組んで座り、軽く息をついた。

「…ハレルヤと何かあったんでしょう。喧嘩ならもっと静かにして下さい。迷惑です。」

「いや、喧嘩じゃねぇよ。…ただ、俺が調子に乗りすぎたっつーか、悪ふざけが過ぎたっつーか、なんつーか…」

そこで突然、ティエリアの白い人差し指がロックオンの口許まで伸び、言葉を静止させる。

「言い訳するなら相手が違います、ロックオン。――まぁ、そこまで話せる元気があるなら良いんですが。」

「あ、あぁ。とにかく助かった。サンキュ。」

「この貸しは高くつきますよ。」

「借りは必ず返すさ。何が良いか?」


一度開きかけた唇は直ぐに閉じ、数拍おいて再び開いた唇に言葉が乗せられた。

「…風邪の完治を要求します。」

言い終えるとティエリアは立ち上がり、病室のドアへ向かった。

背を向けたティエリアに向かって、ロックオンが声をかける。

「りょーかい。じゃ、言いかけたヤツは風邪が治ってから返すな。」

ティエリアは弾かれたように振り返り、にこやかに笑いかけるロックオンを見て思わず顔を紅潮させる。

「な…っ!?」

「ん、どうした、ティエリア。顔が赤いぞ?もしかして風邪が移ったか?」

ロックオンの邪気の無い眼がティエリアを見つめる。

「貴方という人は人のことばかり気にして…まぁいいです、それでは君の提案通りにさせて頂きましょう。失礼。」

ティエリアは病室のスライドドアの開閉ボタンを押し、通路へ出るともう一度振り返った。

「ん、どうした?」

「ロックオン、風邪が治ってからのお返し、とても楽しみにしていますから。」


そしてティエリアは、正に『にっこり』という擬態語が相応しい笑顔をロックオンに見せると、軽い足取りで退室していった。

シュンッと軽い空気音を立ててドアが閉じ、病室にはロックオン一人となる。

「…俺、何かとんでもないこと言っちまったような気がする。」

背筋を下から這い上がるような寒気は、風邪のせいと思いたいロックオンであった。





後編へ続く☆
 

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