R×T
□絡まぬ螺旋 T
1ページ/2ページ
気が付いたら、人目を避けるように展望室に来ていた。
柔らかいカーブがつけられた強化ガラスの向こう側は、深海の深い緑青。
スライドドア脇の壁面にもたれ掛かり、一面に拡がる緑青を眺める。
ゆったりとした深海の流れを眺めている内に、身体ごと吸い込まれそうな感覚に囚われ、回避しようと両眼を閉じると、今度はドロリとした感情の波が体内を駆け巡る。
『違う…あの男は彼じゃない。』
何度も心の中で繰り返した言葉。
そうだ、判っていたはずじゃないか。
何を期待していたんだ、僕は。
「…何を、求めていたというのだ…彼に。」
無意識に零れた言葉は展望室内に溶けて、己の身体は思考の海へと溺れていく。
「ライル…ディランディ…。」
.