R×T


□絡まぬ螺旋 U
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「物に八つ当たりなんて穏やかじゃねぇな、ティエリア。外まで音が響いてたぜ。」


背後から突然聴こえた声。

驚いたティエリアの身体がビクリと震える。

「…そんなにビビりなさんなって。驚かせるつもりは無かったんだがな。」

骨に響くような深く低い声音。

ティエリアは姿を確認せずとも、背後にいる人物がロックオン・ストラトス――ライル・ディランディであると直ぐに解った。


今、一番逢いたくなかった人。


ティエリアは心の中で舌打ちをする。

頭一つ分高い身長、栗色の緩くカールした髪、北欧育ちの白い肌、瞳の色と同じ緑色を貴重とした制服。

前方の展望室のガラスに彼を表す総てが写し出されている。

「…ロックオン・ストラトス。」

いつ見ても憎らしい程に瓜二つな容姿。

彼と同じ遺伝子を分かち合った男…ライル・ディランディ。


「兄さんの敵のことでも考えてたのか?」

「そんな…所だ。」

ティエリアは壁面に預けていた身体を引き離して展望室のガラスの前まで進み、そこへ右手を添える。

壁面に打ち付けて熱くなった右手が、グローブ越しにゆっくりと冷やされていく。

「アンタさぁ、…本気で兄さんの敵討ち、するつもりかよ。」

ライルの声と、ブーツが床を蹴る音が段々と大きくなる。

「答える義務はない。…ロックオンには関係ないことだ。」

「あるんだよ、関係。」

視界の左隅に緑色の制服のジャケットが写り込む。

「仮に敵討ちをするとして、そのような行為は過去に執着したものだ。…君は過去じゃなく、未来のために戦うんだろう。」

「…そうだ。」

ガラス越しに視線が絡み合う。

「だったら…」

「――だから関係あるんだよっ」

「――っ!」


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