R×T
□紫煙の渦(完成)
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シンプルな丸縁の眼鏡の奥にある、
暗がりの中でも一際目立つ緋色の瞳が
ライルを正面から鋭く見据える。
『そんな物』とは、
右手の中指と人差し指に挟まれている、
煙草のことに他ならないだろう。
「ティエリアか。悪いが、これだけは止められないな。」
一口吸い込み、
ティエリアにかからないように顔を背けて、
ゆっくりと吐き出す。
煙が渦を巻いて溶けていく様を眺めながら、
ティエリアは続ける。
「それが身体に悪影響を及ぼすとわかっているのか。」
「わかってるさ。お気遣い感謝するよ。」
「……君はわかっていない。」
そう言うなりティエリアは
大股でライルの目の前まで近付く。
「…何だよ?」
そのままティエリアは、
ライルの持っている吸いかけの煙草を乱暴に奪い、
グローブを嵌めた手で握り潰した。
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