R×T
□絡まぬ螺旋 T
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つい先程耳にしたばかりの彼の言葉が、脳内に木霊する。
『全て過ぎたことだ。昔を悔やんでも仕方ねぇ。』
『過ぎたこと』…「人間」はそう簡単に割り切れるものではない。
『…そうさ、俺達は過去じゃなく、未来のために戦うんだ。』
…だが、未来には進むためには、過去の柵(しがらみ)を断ち切らなければ。
5年前のあの戦いの後から…、独りでも成し遂げると心に決めていた。
刹那達、少年兵の幼い心を弄び、ロックオンから家族を奪い、そしてロックオン自身の命を奪ったあの男。
「アリー…・アル・サーシェス…。」
あの存在を、断ち切ると。
私怨で動く愚か者だと言われようが構わない。
世界の歪みを破砕する前に、新たな悲劇を生み出す前に、これだけは成し遂げなければ。
「違う…あの男は彼じゃない。」
もう一度繰り返すと、右手の拳を壁面に強く叩きつけた。
一瞬でも、彼に同調を求めた、自分の甘さを叱咤するために。
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