R×T
□絡まぬ螺旋 U
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ライルは急に声を荒げたかと思うと、ティエリアの左肩を掴み、強引に振り向かせた。
両肩をしっかりと掴まれ、ティエリアは眼を逸らすことさえ出来ない。
ライルはティエリアを見据え、言葉を続けた。
「さっきの兄さんの敵との戦闘…あんな無茶苦茶な戦い方して…死にたいのか、ティエリア。」
「いや…まだ、死ぬわけにはいかない。」
「まだ…って、何だよソレ。目的を果たしたら死んでも良いみたいな言い方だな。」
「…そう受け取ってくれても構わない。」
ティエリアの言葉を聞いたライルの表情が、困惑と焦燥を混ぜたような笑みに変わる。
「ハッ…何…だよ、ソレ…。」
突然、ティエリアの両肩を掴むライルの両手が、骨が軋みそうな程の力をかける。
「――っ」
苦痛によって顔を歪めたティエリアは、その瞳に明らかな怒りを滲ませ、ライルを睨み返した。
「……?」
しかし、ティエリアの怒りは、直ぐに疑問へと変わる。
貴方の方がどうして、そんなに苦しそうに瞳を揺らがせるんだ…?
「――っ!?」
浮かんだ疑問は、ライルが突然ティエリアを顔前に引き寄せたことで中断された。
「そうかよ…。せいぜい、目的のために一生懸命頑張ることだな。そしてどこへでも好きに行けば良いさ。――兄さんの所へだって…」
「ロックオ…――んぅ!」
ティエリアの言葉は最後まで紡がれることは無かった。
ティエリアの唇をライルの唇によって塞がれ、さらに半端に開かれた唇からライルの熱い舌が侵入し、言葉も、息も飲み込まれる。
「…ふ…ぅ…っ」
歯列の裏側をなぞられ、侵入してきたライルを避けようと奥に引いた舌を、逆にからめとられ吸われる。
自ら望んでいない行為であっても、快感を感じ生理的に反応してしまう身体に悔しさが込み上げる。
押し返して引き剥がそうにも、肩を掴む手の力は相変わらず強く、骨が悲鳴をあげそうな程に痛くて腕が上げられない。
それなのに――…
口内に与えられる刺激は、どうしてこんなにも甘く優しいのか。
『彼』と同じ熱と感触と、
『彼』とは違うキスと匂い。
――これ以上、考えたくない。
ティエリアは眼を閉じて、思考を停止させた。
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