novel./z

□a no-passing zone/2
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零崎人識。
その名は外部には全く知られていないものの、一族の中ではかなり有名である。
それは、彼が忌み嫌われる‘零崎’の中においても、異端だったからだ。

零崎同士の近親相姦で生まれた零崎の中の零崎である事。
やはり異端に位置するレンこと自殺志願がかなり可愛がっている事。
誰にも何を考えているかわからない、その思考。
そして何より、

彼は‘家族’を必要としない事。

だから零崎一賊下の入ってはいるものの、自殺志願を除いては彼はめったに他の零崎とはつきあわない。
だから様々な事の成り行きで、大将などと呼ばれている軋識にしたって、人識がこんな風に一人で尋ねてくるのは、かなり珍しい事なのだった。



…とはいえ。

「うわ〜相変わらず広々してるな、ここ。おーソファふかふかだ〜」

自殺志願とは結構一緒に来ていたので、ここは人識にとっては勝手知ったる他人の家なのだということを、人識訪問三分後に痛感させられた軋識だった。
先に居間に行った人識の後に続いて部屋にはいると、用意していないはずのオレンジジュースとお菓子二人分が、テーブルにきちんと並べられていた。
人識はというと、軋識お気に入りのソファで思い切りだらだらしている。

「そこは俺の憩いのスペースだっちゃ」
「うん、知ってる」
「ならどくっちゃ」
「俺、一応お客様」
「それはそうっちゃが、俺は疲れてるっちゃ」
「いーじゃん、俺と大将の仲だろ?つーか、早い者勝ち」

ソファを諦めた軋識は、代わりに丸い座布団を引っ張り出してきて、その隣に座る。
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