novel./z
□思いを繋げた鎖の行方。
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☆わたしはいつも笑っているけれど、
もしかしたら、泣いているのかもしれない。
分からないけれど、分からないけれど、
わたしが思っていたことは、何だったのだろう。
何を、望んでいたのだろう。
どこから、間違ったのだろう。
正しかった、はずなのに。
少なくとも、自分の中では、
論理が、
ちゃんと成立していたはずなのに。
大切なものが何なのか、わかっていたはずなのに。
分からないけれど、分からないけれど、
彼に対するおもい。彼女に対するおもい。
大切な人へのおもい。重ね合わせたおもい。
しんでいった、彼女たちへのおもい。
わたしは、何を望んでいたのだろう。
そして今、何を思っているのだろう。
分からないけれど、分からないけれど。
‡まさか俺が二人居るとは、思わなかった。
何度も何度も、考えたことだけど。
初対面の時を思い出すたび、浮かぶ言葉はただ一言。
それはまるで、鏡の向こう側。
けれど決して、架空の、虚像の世界なんかではなく。
けれど決して、現実にいる自分に、距離が近いわけじゃない。
あいつは、傍観者で、俺は、殺人鬼だ。
日常と、非日常と。
お互いが身を置く状況は、違うわけで。
それでも、やはり、
そこに在ったのは、鏡の向こう側。
同一の、同じ重さの、一個の存在。
俺が辿るはずだった、とある選択肢を選んだ、俺自身の姿。
勿論、人間生物において、
まったく同一の存在なんてありえないわけで。
だからこれは、俺の勝手な想像に過ぎない。
勝手な、身勝手な、精神的錯覚。
言うまでもない、こいつが傑作ってやつだ。
俺はあいつで、あいつは俺で、なんて、
そういや昔本で読んだっけな、なんてうそぶきながら。
今日も俺は、ナイフを片手に町を彷徨う。