novel./z

□a no-passing zone/2
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静かで穏やかな夜は、しかしノックの音で破られた。
コンコン、コンコン。

「いったい誰だっちゃ、こんな時間に」

この家の主である零崎軋識がパソコンから顔を上げ、壁に掛かっている時計を見ると、午前一時ちょい過ぎ、というこれまた半端な時間だった。

「鍵は開いてるっちゃ、入りたければ勝手に入るがいいっちゃ。俺はいま、手が離せないんだっちゃ」

もう少しでブロック崩し最終面をクリアしそうだというのに、そんな大事な局面で手を離すわけにはいかない。
しかもあと一個。
そんなわけで軋識は、少し大きめな声でノックに返事をし、再びパソコンに向かう。
ところがノックはまだ続く。
コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン、コンコン。

「…しつこいっちゃ」

さっきの声は確実に届いているはずである。それなのにこうもしつこくノックするのは、敵か、あるいは身内の、やってる本人しか楽しくない、質の悪い悪戯か、そのどっちかである。

「…どっちにしろ俺が出ていくまではやめないっちゃね」

『you've got cleared!!』の文字を残したパソコンの電源を切り、軋識は玄関に向かう。
というより、本当はどっちなのか、検討はついているのだけれど。
敵と‘家族’の気配を間違えるようでは、すでに零崎失格である。
まあもし、万が一、言ってみればレンが家族を裏切るくらいありえない確率で、扉の向こう側にいるのが敵だったとしても、愛用の獲物で叩き潰せばいいだけの話だ。
軋識は、普通にがちゃり、とドアを開けた。
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