novel./s&w

□幸せのかけら
1ページ/4ページ


「ねえ、黒りんー」

「なんだ?」

「ぎゅ、ってしてー?」

「あ?」

「ぎゅー」

そう言って何を思ったのか、ベッドに腰掛けていた俺に、
ヤツ…ファイは飛びついてきた。
首に、腕が回される。

「えへへー、ぎゅー」

すごくうれしそうにするので、
マガニャンを読むのに見事に邪魔だったのだが、
何もいわないでおくことにした。

「っていうか、わざと妨害したんだけどねー」

「…やりやがったな、この野郎」

「いいじゃん、今日くらいー」

へらへらと、笑う。
こいつは知ってるのだ、こいつがこうやって触れてくると、
どんなに何かに熱中してたとしても、
俺がこいつをかまってしまう事を。

「黒りん、相変わらず痩せてるねー。
あはは、抱き心地わるーい。
もここを見習った方がいいよー」

「ほっとけ。それに、どう見習えっていうんだ」

「んー?そうだねー。
とりあえず、なんでも食べるようにすればいいんじゃないかなー?」

「嘘吐け。
そんな事だけで、あんな、無限柔らか素材になるか。
っていうか、お前は俺に、あんなのになってほしいのか?」

「あんなってのは失礼だよー。
うん、でも、そうだねー。一回くらいは、なってほしいかもー」

「なんだ、そりゃ」

「だってー、あのくらいのサイズならー、俺が黒りんのこと、
だっこ出来るじゃん?」

しかも人目とか、全然気にしないでいちゃつけるんだよー、
とうれしそうに続けられる。

「だっこってなあ…今のお前でも、十分出来るだろ」
力はあるのだ、こいつだって。

「まあ、そうだけどさー、
やっぱ、俺、人間ばーじょんなら、
黒りんにだっこしてほしいもんー。ぎゅーって」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ