『恋、焦燥れ』
     幸村×三成



「…本当に構わないのですか?」

 幾度も云う幸村は俺が誰を愛しているかを知っている。それでも幸村は俺を好きだと繰り返した。
 だから俺はこの感傷的な心を癒したくて狡く幸村を利用する。独りでは持て余す想い。忘れさせて欲しいと云えないまま縋り願う。

「甘えるなら、指輪ぐらい外してくれませんか?」

 微苦笑の優しい批難は狡い俺への、幸村の些細な反意。そしてその俺を独裁していた相手への敵愾心が覗く。
 揶揄しても俺が指輪を外さない事を判っていて幸村は指摘する。それに罪悪感がない俺は多分に幸村を傷付ける。だからと内心で継ぐ謝意は俺の欺瞞にしか過ぎないことも判っていた。

「それは出来ない。まだ愛しているから」

 なのに鎖さなければならない想いを言葉にすると胸が痛んだ。理解は出来てもまだ心が追い付かない。その痛みが苦しくて、知らず震える俺の指先を幸村が気付き握り締めてくれる。
 視線を上げれば、幸村の想いが籠められた接吻けが貢がれた。

「…優しく、するな。
 責めてくれて構わないから、俺を独りにはしないで欲しい」

 でないとあの優しさと被るから。
 微笑う気配。我儘な俺の頬を撫でると幸村が「本当、最低な人ですね貴方は」と呟いた。


   ―――幸村×三成




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