『心、酔えたなら』
     清正×三成



 淫蕩な眼差しに緩く微笑を絶やさない口許。何度も意味なく俺の名前を繰り返し云っては愉しそうに微醺に酔う。

「三成」

 これ以上は悪酔いすると盃を取り上げる。が、三成は俺の盃を奪い酒を手酌する。飲み干してはまた酌み、俺にも飲めとその盃を渡す。
 判ったと飲み干し、その盃を隠すように遠避ける。返せと云う手を遮り制止を説くが三成は聞かず、均衡を崩された俺の上体が後ろに傾ぎ、腕を付いて耐えたが三成の躯が俺の膝を跨ぐ。

「…っ」

 体勢に瞬間、抑制する恋情に危機感が過ぎる。
 なのに三成は跨いだ膝から退かず、迫るように貌を近付け俺を覗く。

「離れろ」

 簡素に告げて視線を逸らしたが、三成は何も云わず俺の頬に触れ視線を戻させる。止せと冷静に三成の手を取り不安定な背中を壁に預け、愚図るような三成の態度をあやした。
 溜息混じりに酒の横柄さを許し、微笑を返して髪を撫でてやった。

「判った。お前の気が済むまで付き合ってやる」

 観念すると三成が視線を落とし、長い睫毛を瞬かせると髪に触れた俺の手に指先を重ね頬を寄せる。

「…意地悪だなお前は」

 酒を手繰り寄せ一緒に潰れる覚悟を決めれば、三成が不意に呟いた。
 見れば俺を正視した三成が「隙を見せても、口説いてもくれない」と拗ねる。窺うと三成の目許は紅いが芯は酔ってなく、雰囲気が先刻とは違うと気付く。

「こんなにも、お前を想うのに…」

 近付いた三成が「馬鹿」と俺に接吻け、重ねて違う角度で唇が触れる。躊躇いがちに甘く唇が咬まれ、接吻の切なさに三成の首筋を抱いて引き止めた。
 俺から接吻をするような咬み付く素振りを見せ、三成の真意を窺う。

「…」
「くれないのか…?」

 謀る俺の唇を一瞥し、三成が堪らず声にする。

「いいのか、俺が接吻けても」
「…清正に愛されたい」

 近い唇に接吻を意識した三成が、酒に酔えない程に緊張して言葉を震わせていた。想いを焦がした姿態を曝し、待てず俺に接吻までして。
 なのに気付けなかった自分が情けなく、三成に在る想いが溢れる。

「悪い。でも多分、俺の方がお前を愛してる」

 接吻けると三成から酷く酒の馥郁がした。


   †終†


   ―――清正×三成




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