企画ブック
□この恋が恋であるうちに、
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いつものように笑みを浮かべて私を抱きしめるあなたのその腕が、いつから重く、苦しく感じ始めたのか今ではもう分からない。
雨が嫌いだといつも言っているのにどういうわけか濡れている金色の髪
「ほたる…風邪引くよ?」
黙ったままずっと私を抱きしめている。きっと何処ぞの女と喧嘩してきたのだろう。私が何も知らないとでも思ってるの?
そんな日常が当たり前になっていた毎日にも嫌気がさして、だけど離れることが出来ない自分への苛立ち。
重く苦しいと感じながらも私を抱きしめるあなたに少しの満足感がいつも胸のどこかに潜んでいた。
「愛してる」
そう言って自然に口づけを交わすのだけれど、本当にお互い想い合ってのことなのだろうか。
「…私も愛してる」
勝手に口走る自分のその唇が…そう言うように仕向けた自分の脳が、嫌らしくてたまらない
いや…本当は勝手に口走っているのではない。これは私の本心。だけど頭のどこかでそのことを認めたくない自分がいる。だって私だけそんな気持ちなんて不公平よ。
あなたには別の女性がまだ他にも沢山いるのに私だけ騙されるのなんて嫌だもの。
だから騙されているフリをしてあげているだけ。何も知らない利用できる彼女を演じてあなたを優越感にひたらしてあげるわ。
「服…脱いで…」
だけど、そんな事考えながらも胸がチクチクするのはやっぱり私はあなたが好きだからなのだろう。
拒否することもなく自分で自分の衣服を剥いで今日もあなたには見えない横顔で涙を流す。
あなたと一つになっても、どんなにあなたと体を重ねても何も変わらない。
重なる体とは裏腹にあなたの心はどこに置き去りにしてきたの?私を見てないあなたのその顔。
何度もひっぱたこうとした。だけど、結局出来ないの。
都合のいい彼女をいつまでも演じたいからじゃない。
あなたを失うのが怖いだけ。
ただそれだけ。
この恋が恋であるうちに、終わらせるべきだった私とあなたの物語。
ズルズルきてしまった今では交わることのない想いがあなたの周りを行ったり来たり。それでもあなたが戻ってきてくれないのならもうその時は……
今度こそお別れだよ
END
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確かに恋だった
2009.11.7