企画ブック

□拍手限定ストーリーT
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その日は大雨が降っていた。

私は傘を忘れ、近くの小さな小屋の屋根で雨宿りをしている時だった。



一人の男が私に近づいてきた!
――っと思いきや、ただ黙って私の隣で腰を下ろした




「あ、あのぉ……」




思わず声をかけてしまった私を冷たい眼で見返すと





『……何か用?』



と、ただ冷たくそう言った。





「あ、いえ…その…」




『………何?』






言い淀む私を促すようにまた彼はただ一言そう言った。





「君も、傘忘れたの?」





やっと言葉にすることが出来、ホッとする私に彼はすぐに





『…雨嫌いだし…』





拗ねた子供のように言った。





質問の答えにはなっていないものの、言いたいことは何となく…分かる気がした。





「そっか……あたしも嫌い。だけど、晴れた時に出る虹はとっても好き……」




『ふ〜ん……』





あまり興味がないだろう彼に私は何故か話を続けた。





「ずっと快晴の天気だと、虹は見られないから…」




『俺は…雨も水もアイツも嫌い…』





アイツ………


誰の事を言っているのか…全く分からなかったけど、そんなに嫌いな風には見えなかった。





ただ、大切に想っているのだと分かってしまったから……






「きっと君も、綺麗な虹を見ればたまに降るこんな雨も少しは嫌じゃなくなるよ。」






私は彼に微笑むと空を見上げた






いつの間にか雨は止んでいた。




雲の隙間から微かにチラつく太陽。




差し込む光が私と彼を照らした。





『あ、虹………』





彼は下ろしていた腰をあげると私の肩を叩き、そう言った。






「綺麗………。」




「…うん、綺麗。こっちも…」






彼は私を見ると口元を微かに緩めた。







「………//。何言ってるのよ!//」






紅く染まった顔を隠すように私はまた空を見上げた。







「君、名前は?」




『ほたる』





「ほたる、か…また会えるかな?」





 



『……会える、と思う。』





「…私も、そんな君がする。」









雨の日に出会った彼はとても独特な雰囲気の持ち主で、掴み所のない人だった。





だけど私は少しだけ、



運命を感じた。







それは虹が私にくれた天からの贈り物なのかもしれない。























おわり


2010/07/31
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