HERO GIRL

□彼女と初恋と刑事さん
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「どうした大木。珍しく――いや、いつも以上に黙ってるな」
「バスコ…」
「ん?」
「…す、好きな人が出来た時は、どうしたらいいと思う?」




バスコにそれを聞くのか…!?と、思わず翔瑠は、手にしていたスマホを落としそうになった
打っていたメッセージが、途中送信してなかったことは幸いだ




「好きな人が出来たのか」
「…」
「大木、マジかよー!!」
「相手はどんな娘だ??」




男ばかりの建築学科では、こういった女にまつわる話に皆が飛びついてくる
しかもそれがあの大木と来た

じっとバスコを見つめている大木
それを見て、翔瑠は少し不安になった




「…大木、いくらお前がバスコを慕ってるって言ってもよ、流石にそれは」
「大木…っ!」
「ちゃ、ちゃんと女の子だって…!!」
「あぁ、そうか…そりゃそうだよな」
「…??」




バスコは解っていないようだ
いや、解らなくていいと思う――翔瑠は首を振った




「で? どんな子なんだよ」
「…」
「お前、やっぱり――」
「え、えっと…笑うと可愛くて、でも強くて――目が合っても逸らさなくて、こんな自分でも、傍に居てくれる優しい子…!」

「「おお…っ」」




バーンナックルの仲間たちは、大木の甘酸っぱい恋模様にざわめきだす
自分達にも同じ覚えがあるからな、と泣く奴もいた
殆どが女と目を合わせたり、傍に居たりなんて――経験ないだろ

そして、大木の発言がかなり具体的すぎる気がした
そんな奴いるのか?



――いや、一人いるな



…翔瑠は自分の幼馴染を思い出す


笑うと可愛くて…


強くて…


大木の傍に普通に居る奴…





そして…だんだんとその顔が青ざめて行った




「翔瑠? 便所なら付いて行くぞ」
「い、いやいやっ…大丈夫だバスコ!!」
「? 全然大丈夫そうに見えない。どうした、顔色悪いぞ。冷や汗も酷い」
「ははははは…っ。大木、ちょっと――」




ちょいちょいと手招きをして、大木をバスコから遠ざける
何だ何だと興味津々に見てくる奴らを牽制して、翔瑠はこっそり聞いてみた




「お前…っ。それってよぉ――」
「…! 翔瑠には解るか」
「あいつしかいねーよ! マジか…大木」
「すまない。翔瑠」




大木は本当に済まなさそうに頭を下げてきた




「お、お前が誰を好きになろうと勝手だろ?」
「だが――お前も、そうなんだろ?」
「…俺が?」




幼馴染を思い浮かべて、翔瑠は表情を歪ませた
それからすぐにふっと笑って、彼は首を振る




「余計なこと考えるんじゃねぇよ。バーカ」
「翔瑠…」

「なー、大木って誰が好きなんだよ。うちの学校の奴?」
「それとも学園祭に来ていた他校生か?」





あっという間に大木は、質問攻めにあってしまった
これが女性だったら嬉しい事もないが、建築学科は男だらけだ
しかも筋肉質ばかりが揃いも揃って――あ、大木が少し泣いてる


バスコの影響か、あいつも涙もろくなったなと、翔瑠は神妙な顔をした




「翔瑠」
「お、バスコ。どうした――」
「大木は、誰が好きなんだ?」
「さ、さあな」
「大木に彼女が出来たら――皆でお祝いしよう」
「お、おう」




果たして、俺もバスコも――

その恋を応援し、ちゃんと祝えるだろうか?





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