HERO GIRL

□私と同中と怖い人
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「もしもーし! オレオレー! うん、うん? え、詐欺じゃねぇし! いいから早くコンビニ来い。5秒以内だ。あ?いいから来いよ」



ピッ

ちりん



「先輩無理っす。5秒なんて!」

「「!!?」」

「おう。でも10秒で来たな!」
「先輩が待機してろとか言うからでしょ。あれ、何この状況。うわっ、君大丈夫!?」



こんばんは、部下の人
そして仕事を増やしてごめんなさい
馬鹿の相手させてすみません




「婦女暴行と娘が上に乗ってた罪で話聞くから」
「暴行はともかく娘さんのは完全な私情でしょー」




溜息を吐きながら、部下の人はいつも通りの仕事を始めた
たった一人でテキパキと仕事をこなす部下の人は格好いいと思う
そして父は…もぐもぐと床に這い蹲る男の上で、肉まんを食べていた




「てめっ…降りろ!!」
「やだ」
「畜生…!」
「修ちゃん…」
「ゆ、唯。助けてくれ! なっ? 俺が捕まるとかお前も困んだろ!? 俺が居なきゃお前、寂しいだろ!?」




唯は押し黙っていた
直ぐに『うん』とか応えてくれるならまだよかった
この女は自分が居ないとだめだと解っていたから――



「おい。てめーの男の事をとやかく言うつもりはねぇけどな」
「…流星?」
「せめてよぉ。てめーが一緒に居て、幸せって思う奴をちゃんと選べよ。…女を殴るやつは最低だからな。お前、そいつといて幸せだったのか?」

「修ちゃんといて、あたしは…」




最初のころは良かった
優しくて、ちょっと乱暴な人だったけど、あたしがいなきゃこの人は駄目なんだって思った



「あたしは…」



でも、何処からかズレてきて
修ちゃんといるのが辛くなった、人にも物にもあたって、あたしにだって…



「お、おい。唯…?」
「…っ。」




あたしは、それでも幸せだった?
こんなに顔がボロボロになって、今もボロボロに泣いて――




「あたし…っ。辛かった…っ! 幸せなんて、きっとなれない…!!」
「なっ…てめぇ。唯!!!!」
「はーい。じっとしてろっての」
「お、重っ…!!」




今にも殴り掛からんばかりに男が唯を睨みつけたけれど、父がそれを許しはしなかった
肉まん頬張って、ただ上に乗っているだけじゃなかったんだ



それから食べ終わった父は、部下の人と一緒に男を連れてコンビニを出て行った
去り際に、父が言った




「帰ったらお母さんが待ってるよ」
「おっふ…帰って来てるんだ」
「そ。『地味子が居ないの!』って電話きたから」
「マジか」



全て知ってたんだな、この父は

…帰るの嫌だな、鬼が待ってる




「じゃあ、俺も帰るわ。唯、送ってやる」
「えっ…!?」
「そんな顔じゃ人に見られんだろーが」
「あ、ありがとう…ッ流星」
「おう。…瑞希には言うなよ!」
「…ふふ、解ったわよ」



それから流星と唯が店を出て行った
その時唯ちゃんがこっちを見た気がしたけど、家に居る鬼が気になってそれどころじゃなかった




「はは…吃驚したね。地味子ちゃん怪我はない?」
「うん…鬼が待ってるから帰りにくいなぁ」
「鬼!? えぇと…さっきのお父さん、刑事さんだったんだね」
「そうみたいねー」



彼女は話しすらまともに聞いていなかった
そんなに家に居る鬼が怖いんだろうか?

でも、もう0時近い




「ど、どうする。今日はもう上がる?」
「うーーーん…」
「(凄く悩んでる…)」
「と、とりあえず倒れた物とか片付けるから――」




店の中で暴れたせいか、色々と物が散乱している

これを全部片付けないとな――
酔っ払いとか不良が暴れたりすることも多々あることから、こうして片づけることには蛍介ももう慣れていた

商品を棚に戻したり、ごみを片付けたりして、店内はあっという間に綺麗になった
思わず満足感に浸る




「ふぅ…」
「ううーーーん…」
「(まだ悩んでるよ…)」




ふと、急に生理現象に襲われた――
緊張が途切れたのか、催してきた




「あー…地味子ちゃん、僕ちょっとトイレに…」
「ううううーん…」
「い、行ってきまーす」




どれだけ悩むんだろう
戻ってくるころには、解決しているかな?




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