HERO GIRL

□私と夜とコンビニ
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「じゃあね、地味子」
「バイト頑張れよ」
「うん、ありがとうー!」




再び店内は自分一人になって、時間も時間だからお客さんはもっと少なくなる
暇だし、掃除でもしようかな?
でもさっき床はピカピカに磨き上げたし、窓だって曇り一つない
ゴミ捨てだってしたばかりだから、そう何度もやっても切りがない



ちりん




「いらっしゃいませー」
「あら、貴女…」
「え?」




来店と同時に美人のお姉さんが来た
スーツを身に纏って、ハイヒールが鳴り響く姿は凛としている
誰だ、この美人…見たことある




「此処で働いていたの? いつもは男の人なのに」
「…あ、美人のお姉さんだ!」
「えっ?」
「あー、すみません。夜のバイトは今、お盆なので休みを取ってるんです」




そう、と彼女は一つ返事をした
この人も夜にコンビニに来るのかな?
蛍ちゃんってば羨ましいなぁ、こんな美人を接客していたなんて…

って、一人?




「…あの、この前のグラサン男は居ないんですか?」
「彼なら私を送り届けて帰って行ったけど…」




送るって何、お姉さんあのグラサン男と付き合ってるの?
え、お嬢って呼ばれてたような気がするけど――



「もしかして、肩が痛むの…? あれから大丈夫?」



とても心配そうな顔をされた
そんな顔をさせたいわけじゃないのに私の馬鹿!




「いえ! 大丈夫ですよ。友達に引き裂かれたり、色々ありましたけど…」
「えっ!?」
「あぁ、なんでもないです…はい」




今度は反対に驚かれてしまった
発言には本当に気を付けなければ

お姉さんは口元に手を当てて、何かを考えていた
美人はどんな姿でも様になるよね、その眉間の皺ですらも素敵です




「…ねぇ、昼間は時間ある?」
「? 学校がなければいつでも」
「あぁ、学生だったわね」
「お姉さんは何をしてる人ですか?」
「私も昼間は学校よ。ちなみに同い年」




おお、それは知らなかった
美人で綺麗なお姉さんだから、てっきり年上かと思った




「そうね。今度の日曜日は空いてる?」
「夜はバイトだけど昼間なら」
「…そう。じゃあお茶をしましょう」
「え?」



今、何て?
お茶って――なんで?




「お詫びがしたいのよ。いいでしょ?」
「えぇと、お姉さんが気にする必要は…」
「そのお姉さんって言うのやめて?」
「でも…」




お姉さんはお姉さんだ
よく考えたら、お互い名前だって知らない――




「明里よ」
「え…」
「私の名前は明里と言うの」
「あ、地味子です」




思わず名乗ってしまったが、まあいいか
お姉さん――明里さんの嬉しそうな顔が見られたし




「地味子ね。日曜は譲さんも連れてくるから」
「…え」
「じゃあ、14時に駅前で」




そう言って、明里さんは栄養ドリンクを箱買いしていった
あれって時々売れるけど、明里さんが買って行ってたんだねぇ…

しかも一本くれたし、凄い良い人だ…美人だし!


しかし、とんでもないお誘いだったな
日曜に、明里さんとグラサン男とお茶なんて…




「…何を着て行こう。お母さん」




またもや難易度が高いミッションだと、地味子はガクブルした




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