HERO GIRL

□私とグラサン男と超絶美人
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明里さんは譲さんが戻ってくるまで、ずっと笑い続けていた
え、この人実は笑い上戸なの?

何それちょっと可愛いんだけど




「お嬢、そろそろ帰るぞ」
「あぁ、そうね…もうこんな時間だわ」




カフェに来てから随分と時間が経っていたようだ
自分もそろそろバイトが迫っている
一度家に帰って着替えたいな、お母さんが選んで明里さんも褒めてはくれたけど、なんだか落ち着かないし
いつものジャージが一番だ




「あんた、この時間はいつも寝ているだろう。大丈夫なのか」
「別に。大丈夫よ」
「え。体調でも悪いんですか?」
「あぁ…そう言う体質なの。昼間より夜に活動する事が多くて」



だから夜にコンビニに来ていたのかな?
それならこうして昼間に外に出ている事だって、本当は辛いとか?



「なんかごめんなさい?」
「どうして謝るの。誘ったのは私なんだし…それに、本当に大丈夫だから」




明里さんの笑顔は、体調が悪いなんてことを微塵も感じさせなかった
大丈夫ならいいんだけど…



「あ、そうそう。これからはこっちに連絡してね」
「ん?」
「前に教えたのは…その、もう一つの方だから。ごめんなさい。そっちが私の本当の番号よ」
「ありがとう!」




あの時は咄嗟に『もう一人の自分』用の番号を渡してしまった
後で気づいたけれど、一度も電話が掛かってこないから少しだけホッとする
これで『今の自分』用の番号が登録されたし、一安心だ

女友達がまた増えたとホクホクしてスマホを眺めていると、ふいに見知らぬ番号から着信があった
誰だ?
しかもすぐに切れた、なんだこれ




「何かあれば連絡しろ」
「え」
「あら珍しい。譲さんが自分から番号を教えるなんて。しかもプライベート用」
「…ふん」




え、何これ。
じゃあこれって譲さんの番号なの?
なんでだろう、明里さんのついでに?
明里さんに何か遭ったら殴るぞ的な?

何それ怖い、消すのも怖いから登録しておこう…



「それじゃあ私はこれで。地味子もバイト頑張ってね」
「ありがとうございますっ」
「次に会う時は、もっと気軽に喋ってほしいかな」
「隣が怖いけど善処します!」
「…譲さん」
「行くぞお嬢。放っておけ」



ぶんぶんと大手を振って、地味子は明里と譲を見送った
夕陽に照らされる二人は絵になるよなぁ…

さて、私も帰ろう…




「あの、お客様」
「はい?」
「テイクアウト用のケーキをお持ち致しました」
「…何かの間違いじゃ?」




そんなもの頼んでないけど…と、店員に告げれば確かにお代を頂戴しているとのこと
でも明里さんはコーヒーや紅茶、地味子のケーキ代だけしか出していなかった




「男性のお客様からだそうです」
「…え」
「では、此方を――またお越しくださいませ」



深々と店員に頭を下げられて、地味子はぱちくりとしながらカフェを出た
両手で大事そうに箱を抱える――中身はなんだろう

ふと気になってそーっと中身を見て見たら…



「おっふ…スペシャルケーキだ」




なんで? どうして?
男性って事はもしかして譲さんが?
明里さんのテイクアウトと間違えて渡したんじゃないの、あの店員さん
でも、しっかり私にって言ってたしなぁ…


…え、あの人もしかしていい人?




「帰ったらお母さんと食べよう…!」




ケーキにつられる地味子は、とても単純だった





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