HERO GIRL

□病人と逃亡者といいね
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ど、どどどどうしよう…!!!

あの道也が一方的に殴られて…!
次は俺の番…?

い、嫌だ…どうすれば…!!!



逃げる?

でも、逃げられるのか…!?



だ、誰か…!!!





そ、そうだ――!!





「た、助けてくれ!!」




文字通り、しがみついて懇願した
相手が女の子だろうが関係ない

俺を助けてくれるのなら――!

君なら、きっと俺を助けてくれる!!!





「え、坂木さん!?」
「助けてくれ! あ、あんた、強いんだろ!? 俺を、た、助けてくれよぉ!!」
「あー? こいつ女に縋ってんぜ、女々しい奴!」
「ぎゃははは! 面白れぇ! アップで撮ってやるよ!」




――私はどうしてよく知りもしない男に、必死にしがみつかれているのだろうか

あれか、彼女に別れを切り出されて、捨てないでくれとなく男か、君は
正直言って、恥ずかしい
こんな道の往来で、どうして私は助けを乞われているんだろうか

あとそこの七三男、許可なく撮るの本当にやめて?




「おいおい――女に助けを求めるかよ普通?」
「か、彼女は強いんだぞ!」
「ほぉー?」
「ば、馬鹿言ってんじゃねぇ…!! その子は、俺達とは…関係ねぇんだ!」




這い蹲りながら道也はそう言っていた




「み、道也だって、彼女の強さは知ってるだろ!? 助けてもらおうよ!」
「…っ。知らねぇ! そんな子、俺は知らねぇ!!」
「た、助けてくれよ!」
「やめろっつってんだろ!!」
「道也――」




…不思議だった

どうして道也はそんな事を言うんだろう
どうあっても、私を無関係にしたいようだ




「ぎゃーぎゃーうるせぇなっ」
「ぐほっ!!」
「坂木!」




神野が次に殴ったのは坂木さんだった
道也以上に吹っ飛ばされて――その一発でもう意識が飛びかけているようだ




「助けてって言えよ。なぁ、女に助けてもらえって」
「だ、誰が言うか…ぐあっ!!」
「道也!」
「おうおう。いい画が撮れてるぜー」





…何なんだ、これは

道也や坂木さんが殴られている
それを面白可笑しく撮る男達――

流石に、目の前での暴挙は黙っていられない


どうしよう、止めた方がいいかな
いや、確実に止めた方がいいよね

完全に弱い者虐めだこれ…

この人たち、ワルなの?




「ねぇ、ちょっとやめてよ」
「君は坂木の何かな?」
「何って――ただの知り合い…?」
「お、俺の女さ!」
「…は?」




ボロボロの雑巾みたいな顔をして、何を言い出すんだこの人は?
まだ坂木さんのことなんて、名前ぐらいしか知らないよ?
坂木さんだって、私の事全然知らないよね

あれ、もしかしてこれからお互いを知っていけばいいじゃないかって言う人なの??

なにそれ、超面倒




「あの、坂木さん。何を言って――」
「た、頼む…!! なあっ、頼むよ助けて! あんた…バスコと同じぐらいに強いんだろ!?『地味子ちゃん』だろ!」
「その呼び方やめてくんない?」




私にとっては黒歴史ですよ?




「どうする、大翔?」
「…」
「とりあえず撮った動画、ペースブックにあげとくぜ」




七三男が慣れた手付きでスマホを操作していく
その間に、スキンヘッドの男がずいっと近づいて来た




「すまないお嬢さん。こいつは直ぐに俺の手で遠ざける」
「あ、はぁ…」




何この人、見た目に反して優しいね




「ひぃいいっ!! 嫌だ! 離して…っ」
「おい、これ見ろよ! 再生数もいいねもどんどん上がっていくぜ!!」




七三男が興奮気味に叫んでいた
何でもいいけど、大声出すのやめてくれないかな…




「こいつらを見つけたって言うのが、効いたみたいだな」
「あぁ。そうだな」
「――それにしちゃ、いつもより伸びてねぇか」
「あー。やっぱこいつが女に縋っている姿がウケたんじゃねぇの? ほら、コメントもたくさん来てる」
「…ん? 何だこのコメント」




男達三人が、覗き込むように一つのスマホを見ていた
其処に何があるかなんて興味ないし、自分にしてみれば面倒事はさっさと終わらせたい

彼らがスマホに集中している間に、道也と坂木さんを回収しよう
それにしても、道也はあんなにボロボロになって、立てるんだろうか?

おーい、無事?
あ、返事はある…うん、大丈夫だね




あとは坂木さん――?





「『地味子ちゃん』」
「え?」




聞き覚えのある言葉に、思わず振り返る
神野達三人が、此方を見ていた




「『ミス才源』か。――人が悪いぜ。あんたも十分有名人だ」
「マジかよ…」
「嘘だろ?」





何を言っているんだ
それに、どうしてその事を彼らが――

やがて神野は、スマホの画面を見せる様に突き出してきた


瞬く間に伸びていく再生数

増え続けるいいねの数


そして――




『女に縋りつく坂木w』

『だせぇっ!!!』

『女が強いって言っても、たかが知れてるじゃん?』

『ホントホント!』

『でもこの娘は特別』

『彼女こそヒーロー!』

『ワル共覚悟しろ!』

『地味子ちゃんのお通りですねっ!』

『お前ら! 地味子ちゃん祭りだひゃっほー――!!!』





「…おっふ。SNSってホント怖いね」




デンジャラス兄さんの時のように、面倒なことにならないといいけど――






その日。神野大翔は一本の動画を、ペースブックに投稿した――




『皆さん。俺に宣戦布告とか抜かした奴らを、ついに見つけました。

暴力は嫌いですけど、俺の親まで侮辱した奴らは、絶対許せません。

ところが、坂木の野郎が逃げやがりましてね。

加藤道也に気を取られている間に、まんまとやられました。


宣言通り、捕まえるまでは絶対帰りません』



『皆さんからの情報、お待ちしてます――』




坂木さんは、いつの間にか逃げ出してしまっていた


道也を置いて――…





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