HERO GIRL

□地味子ちゃんと復活といいね
8ページ/8ページ



漸く事件は収束を迎えつつあるようだ
後に『坂木神野事件』と呼ばれるそれに、彼の今後が心配である

…いろいろあったけど、坂木さんも道也も無事でよかったよかった、かな?



ホッとした様に息を吐けば、僅かに頭がふらついた
少し動いただけなのに体が熱い…

かと思えば、直ぐに寒くなった
何これ、体温調節どうなってるの…




「地味子ちゃん…! だ。大丈夫か…?」
「道也…」
「え。ちょ…っ」





道也が無事だったことにホッとしたのか解らないけど、足元がふらついた


あ、ヤバい――道也、受け止められるかな…






倒れ込んでくる彼女を全身で受け止めようとして――



スカッ


…それは見事に空を抱き締めた

お、おかしいな?
地味子ちゃんは空気のように軽く、実体のない人だったのか――!?




「あれっ?! 地味子ちゃ…」




何処に行ったと、辺りを渡して…
彼女がバスコに抱き締められていることに気付く

…ええええっ!?

お前さっき坂木と一緒に居たじゃん!
何でいつの間にか地味子ちゃんを抱き締めてんの?


おいっ、俺の――




「…」




…お、俺の地味子ちゃん、じゃないけどね?

やめて。そんな怖い顔で俺を見ないで?





「…あ、れ…晃司――」




何で晃司に支えられてるんだろう?
ちょっと吃驚だけど、傍に居るって思うとなんか安心感――



って言うか――何か怒ってる?

その表情には何処かで見覚えがあった


えぇと、あれは――…




「こ、晃司…」




…思い出した。

デンジャラス兄さんの時もこんな感じだった!
あれは、自分が女だからとか言う理由で叩かれたんだ
指名手配犯を相手に、無謀なことをしたから…




え、ちょ、待って。
晃司が怒ってるのって、神野とかを相手にしたから?

でも不可抗力だよ!
私は巻き込まれただけ…何だけど、最終的にホイホイついて来たのは私だわ…


身に覚えがありすぎて、晃司の顔なんてまともに見られないよ




「地味子――」
「は、はいぃ!?」




あ、もうだめだ
これ、完全に怒られるパターンだ…


また叩かれるのかな…!





ふわり。




「帰るぞ」
「…え」




だけど、予想とは全く違う行動を彼は取った
急な浮遊感に驚いたけれど、気付いたら晃司の顔が近くに遭った
足は地面に着いてないし、詰まる所――浮いている

下では、道也がアホ面を曝け出してポカンとしていた




「蛍介」
「な、何っ!?」
「地味子を連れて帰る。此処は任せていいか」
「も、勿論だよっ。流星もいるし――流星、何で僕を撮ってるの?」
「あ? 釈明動画って奴だよ。お前が説明しろ」
「えぇっ!?」




あー…蛍介、頑張ってね?

それよりも――




「ちょ、ちょっと晃司。離してよっ。恥ずかしいじゃん!」
「駄目だ。大人しくしていろ」
「はぁ?」
「こんなに冷たくなってるではないか」
「晃司の体温が温かすぎなんじゃないのー」






温かいから、




なんか、



眠くなって――…








風邪をひいた時

体調が悪い時

決まっていつも、悪夢を見る



それは子供の頃から変わらない

高校生にもなって、悪夢に魘されるとか笑っちゃうよね



そういう時、決まって誰かが傍に居てくれた

傍に居て、手を握ってくれたら、何だか安心して眠れたんだよ…








――ガチャ




「…あら」




娘の部屋を開ける




其処には――




「…ふふ。昔から変わらないわね。二人は」




今も昔も、変わらない事がとても嬉しいだなんて…

それでも母としては、ほんの少しでも進歩してほしいとも思う






地味子と、それに寄り添っている晃司君


二人は、互いに手を繋いで眠っていた



安心した様に眠る二人


仲の良い幼馴染



今も昔も、それは変わらない――…






次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ