HERO GIRL

□私と彼女と同中と
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「え、地味子ってば…何を言ってるの?」
「ビッチだよ。この子、そう言ってた――」
「やだ、止めてよ――酷いわ、なんでそんなこと言うの…っ」




わっといきなり泣き出した唯に、地味子も美怜もどうしていいのか解らなかった
とりあえず泣かせてしまったと、動揺してしまう
クラスに皆も、なんだなんだと注目していた




「ご、ごめんなさい…」
「ぐすっ、いいわよ――あたしの事を忘れていた事も、許してあげる」
「…ごめん」
「友達でしょ? 唯って呼んで。あたしも地味子でいいでしょ?」




あれ、もう泣き止んでる…
それに名前呼び!? そんな恐れ多い――




「えっと――」
「わぁっ、良かったね地味子。女友達また増えたじゃん!」
「う、うん…」
「うふふ。よろしくね地味子?」
「こ、此方こそ――ゆ、唯ちゃん」




今日は変な日だと思う
いきなり声を掛けてきたのは、あまり話したことのないクラスメイトで
しかもその子が中学時代の同級生で…




「そう言えば――あの時の怪我はもう大丈夫なの?」
「…え」




どくり、心臓が高鳴った
呼吸が浅く、脈打つ感覚が解ってしまう
さぁっと血の気が引いている――




「怪我? なぁに、地味子ってば怪我してるの?」
「い、いや――昔の話だよ?」
「うふふ、そうね――昔の話よ」
「ええー。二人して中学時代の話? ずるーい!」




美怜がせがむ様に聞いて来たが、地味子はただ笑うだけだった




「あ、教えてないんだ?」
「…話すことのほどでもないから」
「そ。あ、チャイムね」




席に戻る唯の背中を見送って、地味子は少しだけ困惑した…


中学時代の同級生――か
何故、今になって…あの時の事を思い出すのだろう





「ねぇ、地味子!?」
「わっ。何、美怜ちゃん…」




そう言えばまだ彼女が居たんだと、急に話しかけてきた美怜に驚く
そして、ぎゅっと両手を握られた――え、なに?




「怪我をしたんならすぐに言ってよね! 私知らなかったよー!」
「はは…ごめん。でも今は大丈夫で――へぶっ」
「隠すの良くない!」
「…デコピン痛い」




痛くしたんだもん!と、どうして彼女は怒っているのだろうか
訳が解らないよ…

ジンジンと痛む額を抑えて浮かぶ涙を堪える




「少しは頼ってよね。いくら強いからって秘密にしない――独りで抱え込まない!」

「…意味が解りません。美怜さん」




私がいつ、秘密を抱えたと言うんですか…

友達になった頃、生年月日とか血液型とか、好きな食べ物とか、いろいろ聞いて来たよね
あれ、全部話したつもりだったんだけどな
まだ足りないのかな




「おーい、そこー。何イチャついてんだ。女同士で…ちょっと先生そっちの関係はなぁ――」

「え、男同士ならいいんですか。ベンチ持ってきましょうか」
「お前…どうしてそう言うネタには詳しいんだ」
「さあ…どうしてでしょう」
「全く――授業始めるぞー!」




先生の登場で、授業が行われた



――独りで抱え込むなって、なに…







今日、初めてあの子にちゃんと話しかけた
中学校以来だと思う――思い出しても腹が立つ!




『ビッチ』なんて、あたしに言うセリフかしら!?
あんただってそうじゃない、あの二人――晃司君と翔瑠君が同じ学校だってことには驚いたけどね!

今まで何度かすれ違ったりしたけど二人はあたしの事を憶えていないみたい
それどころか、このあたしが微笑んでいるのに二人は顔を背けるのよ?

あれ、覚えられているのかしら、ふふ。
あたしが美人過ぎて逆に直視できないとか?


まあいいわ…

――それにしても、あの子が『ミス才源』選ばれるなんて思わなかった

ミスコンに出るって言うのだけでも腹が立つって言うのに…
普通、あたしみたいな可愛い子を選ぶはずなのに、先生ですらあの子を推薦した


…まあ、元ミスコンの先輩を見た時は勝てるか不安だったけどね
出なくて正解だったわ…なんてちょっと思ったもの



でも、あたしならあの子より上だと解ってるから、一位なんて簡単よ!

だってあたしには『パプリカ』がある!
いつも配信は上位ランキングに居て、もうすぐ一位だって狙えるんだから!!


沢山の風船を貰って、お金に替えて――いい物を沢山買って!
そうだ、あの蛍介にアタックしよう!
『ドレオク』で一位を獲ったあの子なら、あたしにきっと相応しいわ!
その為に沢山彼に貢がなきゃ! 高い物を上げればきっと喜ぶでしょ
その為にはやっぱり――沢山配信しなきゃ!!


修ちゃんにはまた、配信中は隠れてもらうとして…ふふ、楽しみね!





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