HERO GIRL

□彼女と初恋と刑事さん
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そう言えば、何処まで一緒に帰るんだろう――暫くして、大木はそんなこと思った
翔瑠の提案で彼女と一緒に帰ることになったけれど、肝心の『アレ』がまだ出来ていない




「――翔瑠の働いてるとこ、あそこでまったりのんびり好きなんだー」




地味子さんはそんな自分の考えなど知らなくて、ずっと会話を途切れさせないように続けている
それを聞いているだけなのだが、どうにも緊張しすぎて言葉が出てこない
これではお膳立てをしてくれた翔瑠に申し訳が立たない…

程なくして、大木が立ち止まったのに気づいたのは数歩先の事だった




「それでねー…って、大木さん?」
「…」
「どうしたんですか。様子がおかしいですけど――」




こんな自分でも、駆け寄ってきてくれる彼女は、本当に優しい…
あと、首を傾げている姿の破壊力半端ない…!




「地味子さん!」
「は、はいっ!?」

「俺――地味子さんの事が…!!」



ヴーーーーーーー!!!!



『あー! あー! そこの背の高い学生さん。いろんな意味でちょっと止まりなさーい!!』




――聞こえてきたのは、拡声器で静止を呼びかける男の声だった

思わぬ乱入に、大木は言いかけていた言葉を飲み込む
一体なんだと其方を睨みつければ――白黒の車が一台、急ブレーキをかけて止まった
しかも赤灯まで回して…緊急時なのだろうか? サイレンまで鳴っていたぞ?




「えっ。パトカー!?」
「そうだよ。パトカーだよー。ついでに言うと刑事さんだよー」
「なっ…!?」



バンッと大きな音を立てて、しかもイケメン過ぎるスーツ姿の男が下りてきた
なんかもう見るからに怒っているご様子、どう言うこと?




「先輩。勤務中っすよ! しかも緊急走行なんて緊急事態でもないのに!!」
「馬鹿野郎、緊急事態だ! これだって立派な職務質問だ!!」




この子、学生じゃないっすか…ともう一人の男が溜息を吐く
随分と苦労されているようで、地味子は同情した




「大変ですね。いつも振り回されて」
「そうなんだよ…地味子ちゃん解ってくれるかい?」
「えぇ。嫌と言うほどに」




…どうして彼女はそんなにもフレンドリーに、警察の人と話しているんだろう
スーツ姿のその二人は、パトカーに乗っていると知らなかったら、ただの会社員にしか見えない

キリッとしたイケメンの男と、気弱でなよなよしている男…
何なんだ、これは。
呼び止められて…職務質問?

何をしたのか全く見当もつかないと、さっきから冷や汗が止まらない
ただでさえ警察にご厄介になるようなことだけは、してないつもりだったのに――




「名前は?」
「お、大木です…」
「大木君、ね。うちの娘とどんな関係?」
「む、娘って…?」



…え?




「何してんのお父さん」
「(お父さん―――!?)」

「何って職務質問だよ! 娘に近づく知らない男のさ!!」
「恥ずかしいからやめて。ついでに言うと大木さんは晃司の友達。だから私の友達でもある」
「(と、友達――っ!)」




彼女に友達扱いされたのはとても嬉しい事だ
しかし、この人――地味子さんのお父さんはそうは思っていないみたいだ




「ほほう…『お友達』止まりの子ってことで、いいんだよねぇ?」
「え、えぇと…」
「お父さん。大木さん困ってるからやめて。顔近づけないで。仕事モードが台無し」
「えっ。お父さんが格好いいって? イケメンだって??」
「…苦労するね、地味子ちゃん」
「あんな父ですみません」




――何で部下と娘が意気投合してんのッ!?

地味にショックを受ける父だった




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