HERO GIRL

□私と同中と怖い人
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「中学時代に大学生と付き合ってるって」
「そ、そんなのあくまで噂じゃない…!!」
「…ヤッたのか」
「え?」




唯が見上げたのは――怒りに震える修ちゃんだった
今の彼はーーヤバい、と本能的に彼女は悟る




「お前…俺にしか捧げねぇとか言ってたよな。初めてだっつってたよな」
「そ、それは…でも実際そうだった――きゃあっ!!」




…今、この男は確実に、唯の顔面を殴った
それを、全員が目撃して――震えた




「他の男と付き合うなんてとんだ尻軽だぜ!! くそっ! やっぱお前もか!」
「痛い! やめて修ちゃん!!」
「俺を好きだとか言うのも嘘か!? どうせこいつともデキてんだろ。そうなんだろ!?」
「ち、違うっ。流星はただのクラスメイト――!」
「信じられるか!!!」
「きゃあああ!!!」




容赦なく、その男は唯の身体を殴る、そして蹴る――
男のくせに、女に手を挙げるその行為を、地味子は許せなかった



「(ど、どどどどどうしよう…警察!?)」

「おい。止めろよ。男が女に手を挙げるなんて情けねー」
「ああっ!?」
「痛い…痛いよぉお…」



唯は、泣いていた――
鼻から血を流して、涙に顔を濡らしていた
普段から綺麗を心掛けている彼女には、似ても似つかない姿だ

それでも――彼女は優しくしてくれた
同級生だったと思い出せなくても、彼女は友達になってくれた

何も知らないほうが、幸せで、楽しく過ごせていたかもしれない


…もう遅いけど




「蛍ちゃん、奥から救急箱取ってきてくれる?」
「えっ…う、うん」
「――あいつ、ワルだ。客なんかじゃない…」




唯に暴行を働く男はとても怖かったが、彼女の方がもっと怖いと蛍介は思った
とにかく、救急箱だとその場から逃げる様に事務所へ駆け込む

それからゆっくりと男から目を離さず、地味子はカウンターから出てきた




「ちょっとやりすぎじゃない?」
「あぁ?」
「男の癖に最低」
「なんだてめぇ…ビッチの癖に。てめーも尻軽なんだろうよ!」




まだいうか、と目を上げる
地味女と印象付けていた彼女に、男は表情を歪めた

度胸があるのか、馬鹿なのか
とにかく女が男に口を出すなんてふざけている

床に這い蹲って泣いているこの女と一緒にしてやろうか――




「だ、大丈夫ですか…っ」
「デブ。こいつに近づくんじゃねーよ…」
「で、でも、酷い怪我を…!!」
「蛍ちゃんにも手を出すの? とんだワルね。教育がなってないんじゃない」




いい加減、男も切れたらしい
女だからと言って容赦はしない――と拳を握り締める
それを見て、流星がようやく動き出した




「やめろ。こいつも一応女だ」
「流星…一応って何」
「お前は下がってろよ。俺が相手になってやる」
「はぁっ!? お前、俺を誰だと思ってんの? 喜安高校の番長だ! 3年だぞ!」
「年上かよ…どうでもいいけど」




一つ溜息を吐いて、流星は唯を見た
顔は血なのか涙なのか、解らないくらいにぐしょぐしょで、コンビニのデブが一生懸命に応急処置をしていた
とりあえず、顔を何とかしたほうがいいぞ…



「唯。お前、瑞希と仲いいか?」
「み、瑞希? べ、別に…」
「そーかよ。じゃあ――今見たことは絶対に瑞希に言うな」
「え…」
「助けてやるよ。仕方ねぇから」




…流星は、少しずつその印象を変えていくと思った

苛めを率先してしていたと思えば、ある日それがパタッと止んで…
気が付けば、弱い者虐めすら嫌う様になっていた

今もそうだ
唯の為に――彼は戦おうとしている

コンビニのデブへ、借りを返そうとしている




「…って、蛍ちゃんのこと?」

「おらぁ…かかって来いよ」
「地味子も言うなよ。ぜってーだぞ!!」
「はいはい」



『流星ったら、喧嘩はしないって言いきっちゃってさ』

『へぇ…流星が?』

『ホントは我慢ならないはずなのに、あたしが居るからって――ホント馬鹿』



流星が瑞希と喧嘩はしないと約束していた事を、知っていた

瑞希は護れるはずないと文句を言っていたけど…その嬉しそうな顔はそう思ってないよね?

馬鹿な幼馴染を持つと、お互い大変ねと笑い合った


あっはっは…あれ、どう言うこと?




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