HERO GIRL

□私と同中と怖い人
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『うんうん。そうだよね。でもどうしても声が聞きたくてねー! あっ。お休みコールしようか?』

「要らない。切るよ」

『わー!! 待って待って! 聞いてよ。さっきコンビニに寄ろうとしたんだけどさぁ』

「…は?」



それがどうしたと、地味子の目は冷たい
電話だけでこんな表情が出来るのかと、蛍介も流星も少し驚いた

ふぅーっと息を吐く感じに、父はタバコを吸ってるのかと思案する




「コンビニ?」

『そう! 肉まんが食べたくなってねー』

「はぁ…?」

『そしたらね、地味子に似た人を見たんだ』

「…ん?」

『でも地味子は家にいるよね?』




なんだろう…一体何が言いたいんだろう
どうしてこんなに、心臓が煩いんだ?




「あ、当たり前じゃない…」

『うん。じゃあさ、あれは誰かな?』

「は?」

『あそこに見える店員さん、絶対に地味子に似てるんだけど?』



絶対って何だ
推測ではなく確実にいうときに使うんだけど


…聞き間違いだと信じたい

父親の見間違いだと信じたい


手にしたスマホを落としそうになった
口の中がカラカラに乾いていた
言葉すら、見つからなかった――


心臓が煩かった



タバコを吸っている父の、静かでまた長い息が吐き出された




『ねぇ、何で黙ってるの?』

「…っ」

『何でバイトしてるの。何で男の上に乗ってるの? 地味子ってそんな子だったの? 父さん哀しい…』

「お。お、お父さんまでそんなこと言うの…!」



――っていうか、コンビニって…



「お、とう、さん…?」
「ゆ、唯ちゃん?」




唯が小さく呟いた
ガタガタと震えていて、何だか様子がおかしいと蛍介は心配になる




「だ、駄目…あんたのお父さん、来ちゃダメ…」

『あれー。何か女の子の声が聞こえるね?』

「修ちゃん…逃げて…」
「…ざけんなっ。俺に指図すんじゃねぇ…!」

『あれー。今度は男の声だね?』

「駄目っ。修ちゃん、捕まっちゃう…っ」




どういう事だと流星も不思議だった
あれだけ暴行されても、唯は必死にこの男を護ろうとしている

全て、一本の電話から彼女がおかしくなった…




『ねぇ。女の子なんて言ってるの? ちょっと良く聞こえないやー』

「う、ううん…何でもないよ?」

『そっかー』




ちりん


その時、扉が開いた
ふと地味子はそちらを見上げて――とうとうスマホが手を滑り落ちる




「じゃあ、嘘吐きさんも含めて、全員逮捕ね」




…仕事モードのお父さんが来た




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