HERO GIRL

□私と同中と怖い人
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「「(い、イケメンスーツの怖い人来たぁあああ!?)」」
 



流星と蛍介は、揃って同じ事を思い叫んでいた

突然入ってきたその男は、ニコニコと笑っている――のだが、何処か恐ろしい雰囲気を醸し出していた
あ、さっきの彼女に似てる気がする

その人はきょろきょろと店内を見まわし、蛍介、流星、唯、男、そして最後に地味子を見た



「来ちゃった!」
「(なんかデジャヴ―!?)」
「キモイ」
「酷い!」
「あ。店内は禁煙だから消してね」




あれ、さっきまでの勢いは何処へ行ったんだろう
びくびくとしていたものの、次の瞬間には何処かホッとした日常を感じた

持っていた携帯灰皿でその人はタバコをもみ消すと、爽やかな笑顔で言い出した




「うん。お前ら全員逮捕ね」

「「えっ!?」」

「だってほら、其処の女の子血が出てる。顔も腫れてるし、殴られた? そこの眼鏡君がやったの?」

「えええっ!? ぼ、僕じゃな…!!」
「蛍ちゃんはワルじゃないよ」



地味子がそう言えば、今度は流星に向いた



「ん? じゃあそこのイケメン君?」
「なっ…俺!?」
「流星もワルじゃないよ」



一体何なんだ?こいつ
逮捕って…警察!?




「あー。じゃあ女の子が自分でやったの?」
「ひっ…」
「やめようよー。自傷行為なんてさ」
「唯ちゃんは被害者だよ!」
「えー?」




じゃあ…と今度は地味子が組み敷いている奴を見た時、流星はびくっとした
にこやかだったはずの男の顔は、あの流星でさえも畏怖するほど険しかった

マジかよ…見られている訳じゃねぇのに、動けねえ…!




「あー、君さ、なんで娘に乗られてるの? 趣味?」
「はぁっ!? 娘だぁ!?」
「うん。うちの娘。可愛いでしょ?」
「お父さん、この人暴行したの、友達に」
「へー、そうなんだ」




父は泣いている唯の顔をまじまじと見た

それから男の前で屈むと、容赦なくその髪を引っ掴む




「い、いでええええ!? なにすんだ、てめぇっ!」
「ん? お前がそう言うの? そこの子はもっと痛かったはずだけど?」
「はあああっ!? 誰だてめぇっ!!」
「だからお父さんだよ? ついでに刑事さんでーす」




警察の人間がついでとか言わないでほしいと思う
やがて父は、にこやかに地味子を見上げた




「父さんが泣く前に、こいつから降りて?」
「…もう泣いてるよね?」
「あれ、おかしいな。目の前が滲んでみえるよ」




――何で泣いているんだ、この父親は
そう言いたくても、いつものように地味子は言い返さなかった


…言い返せなかったと言うのが、正しいかもしれないけど




「はっ、刑事だぁっ!? そんなん怖くね――ぐはぁっ!!」
「あ、ごめんごめん。つい煩くて」

「「(この人絶対に地味子の父親だ―!!!)」」




髪を掴まれてもなお抵抗する男を、父は容赦なく床に叩き付けた
あ、痛そう…物凄い音したし




「げほっ…て、めぇっ…警察が暴力って、いいのかよ…!!」
「んー。皆が黙っててくれるよ」
「はああっ!? ―――いでぇええ!!」




流石に煩いし、他に人が入らないとも限らない…
地味子は小さく溜息を吐いて、いそいそとカウンターに戻った




「よし。この悪い奴はおじさんが連れて行くから――君達はもう帰りなさい。こんな時間まで出歩くなんて駄目だぞ!」
「は、はぁ…」




帰るにもまだバイト中なんだけどな――

それにこの人、ホントに刑事さんなの…?


怖い人なのか、優しい人なのかわかんないよ!




「君は病院に行く事。可愛い顔が台無しだ」
「…はい」
「で、君は地味子の何。友達? 名前は?」
「き、北原流星っす…」
「流星君? 何、君も地味子を狙って――」




その時、びゅんっと白い何かが彼の顔を襲った




「さっさとそれ持って連行しろ!!」
「熱い!!!!」

「(肉まん――!?)」



肉まんを2つほど入れた袋を投げた地味子は、怒っていた
先日の大木のように、今度は流星にまで迷惑をかけるなんて…

さっきまでの格好良さは何処へ行ったんだ
口が裂けても言わないけど!




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