HERO GIRL

□クレイジーおじさんとヒーローガール
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『けいちゃん? って、この子の事?』

「うん。同じバイトの子」

『あぁー、そうなんだ。なんかこの子変なこと言ってるんだよね、包丁とかさ』




電話口で慌てたように説明をする蛍介の声が聞こえたが、彼自身も状況がよく解ってないのだろう




「…さっき、コンビニで包丁買った人がいたの。その人、美怜ちゃんの配信見ていたみたい」

『えっ…なにそれ…キモ!』

「変な人だと思ったから、ついて来たんだけど――さっき見失っちゃって」

『えっ。地味子って家に居るんじゃないの!?』
『地味子ちゃん、今何処!? け、警察呼ぶ!?』

「警察…うん、一応」




地味子がそう言うと、美怜を通じて蛍介は警察に連絡してくれるようだった




『ちょっと、地味子! あんたその変な奴の傍に居るんじゃないでしょうね!』

「み、美怜ちゃん。声大きいよ。さっきも言ったけど…見失っちゃったから」

『地味子ちゃん。其処は何処なの? 場所を教えて!』

「えぇと、場所は…コンビニを曲がった住宅街の――」




カンッ!!



…カラカラカラ…


ふと転がってきたのは、見覚えのある銘柄のビールだった
中身はなく、乾いた音を立ててそれは、地味子の足元へ転がってくる

しかも、本当に地味子の近くで



――なんで、これが…




「――み・れ・い…?」
「え?」
「…お前、今、美怜って言ったか?」





――直ぐ傍で聞こえてきたのは

あの中年男の声だった…







――*





「お、お願いしますっ。早く来てください!」

『解りました。至急其方に応援をよこします』

「は、はい!!」
「地味子っ!? ねぇ、どうしたの!?」
「み。美怜ちゃん??」




警察への連絡を済ませて通話を切った頃、一緒に居た美怜が慌てた様にスマホに話しかけていた
通話しているのは、地味子だ
その慌てた様子から、彼女に何か遭ったのではないかと心配になる



「どうしたのっ」
「な、なんか私の名前を誰かが呼んだと思ったら、地味子の声、聞こえなくなっちゃった――!!」
「誰かって…」




嫌な予感しかしない…
しかし、彼女の居場所は解っているんだ

僕が、行かなきゃ!!




「み、美怜ちゃんは家に帰って! 僕は地味子ちゃんを探すから!」
「は? 何言ってんのよ! こんな状況で家に帰れると思う!?」
「でも、怪しい男は美怜ちゃんを狙って…」
「今は地味子が危ないかもしれないんでしょ!? だったら、行くわよ!!」




蛍介の腕を掴んで走り出す美怜




「あんた、前に蛍介を迎えに来てた友達でしょ!」
「う、うん…(憶えてたんだ)」
「今日の事を蛍介に言ったら駄目だからねっ!」
「え、えっと…(本人なんだけどな)」
「私のせいで地味子が危ないなんて嫌だから!」
「…っ。うん、勿論だよ」



美怜に腕をひかれながら、蛍介は走っていた
それはもう全力で、普段から運動をしていない分、息も絶え絶えで足も心臓もいたいけど…
彼女の必死な顔を見上げると、どうにも立ち止まることなんて出来なかった

本当に地味子ちゃんことを大切にしている
友達の事が、大切なんだと解る


この子は、いい子だ――




「警察が来てくれるけど、いつになるか…!」
「その前に地味子が危ないじゃない!」
「うう、僕じゃきっと敵わないけど、やるしか――!」
「あんた以外に誰かいないの!?」
「こ、こんな時間だよ? 来てくれる人なんて――」




言いかけて浮かんだのは、彼だった
彼なら――もしかしたら、来てくれるかもしれない


『何か遭ったら連絡しろ。力になる』




そう彼は言って、僕に連絡先を渡してくれた
美怜に引っ張られながら、蛍介は再びスマホを操作する
ぜーぜーと息切れがする、辛い…

お願い、助けて――




「で? 地味子は何処に居るの!?」
「知らなくて走ってたの!?」
「う、うううう煩いわね! 焦ってるんだからしょうがないわよ!」
「い、痛い…こ、こっちだよ――!!…あっ、繋がった!?」



ぽかっと頭を殴られた

いい子、だよね?




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