HERO GIRL

□私と合宿と一日目
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「お前ら、そろそろバス戻れってよ」
「流星」
「よぉ。遅刻か」
「あはっ。ぎりぎり間に合ったよー」




蛍介と暫く話していると、流星がやって来た
傍に唯がいないところを見ると、彼女はもうバスに乗ったのだろうか



「唯ちゃんは?」
「あ? あいつならバスに乗ったぞ」
「なんだ。一緒に居るからてっきり」
「唯が勝手についてくるんだろーが」




お蔭で何故か瑞希から冷たい目で見られるし、何なんだホント
この合宿で少しでも近づけたらいいと思っていたのに、何で唯なんだと泣きたい




「ふ、二人とも。バスに乗ろうよ」
「うん、そうだねー」




今度はファッション学科のバスかと、少しだけ残念に思う
まあ、次の到着先が合宿所だから、気分を変えて行こうと歩き出したところで――


誰かに腕を掴まれた




「…晃司?」
「…」
「どうしたの?」




振り返ると晃司が居た
不思議なことに、腕を掴んで黙っている

どうしたというのだろう、早くバスに乗らなきゃいけないのは同じ筈――

ふと、晃司が持っているバッグに見覚えがあった




「あ、私のバッグ。持って来てくれたの?」
「…! あぁ」
「ありがとうー。バスの中に忘れてたんだね」




こくり、晃司が頷いたのを見て、地味子は笑った
やがて離される腕を名残惜しそうに晃司が見ている




「次は合宿所で会おうね! 楽しみだねっ」
「…あぁ」




大手を振ってファッション学科のバスに乗り込む彼女を、晃司はただ見送った




「バスコ、俺達も乗ろうぜ」
「…」
「(バ、バスコ―――!!)」




地味子が居ないことに、明らかな落胆ぶりを見せるバスコ
それを見て、翔瑠は表情を曇らせた

このままじゃバスコが可哀想だ――
そう考えた翔瑠は、合宿所に着くまでの間、必死で場を盛り上げていた

またも同じ光景がバスの中で広がっている
点数をつけてくれる人はもういないけれど、全てはバスコの為に…!!




「翔瑠…!!」
「(よかった。喜んでいる顔だ!)」





――もうやだこの学校



バスの運転手は心底そう思っていた




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