HERO GIRL

□私と合宿と一日目
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「瑞希、一緒に遊ぼうぜ」




流星と蛍介がやって来た
手にコンビニ袋が下げられていて、中にはお菓子と――お酒があった




「没収されたんじゃないのー?」
「俺がそんなヘマするわけねぇだろ。道也じゃあるまいし」
「あ、道也は没収されてたね。ざまぁ」




漸く寝巻に着替えた地味子だが――何故着ぐるみ?




「高校生にもなって着ぐるみパジャマ…」
「いいじゃん。可愛いでしょ」
「記念に写真撮っちゃお!」
「わーい。あとで送ってね」




きゃあきゃあと地味子と瑞希が言い合うのを見て、森永はどうしていいか解らなかった




「ど、どうして僕が此処に…」
「森永、どうしたの」
「何でもないよ、蛍介!」




蛍介に呼び出されたのは言うまでもない
そして、初めてのお酒に感動を覚え、いつしかペースも進んでいた

女の子たちと一緒なのだ
自分を強く見せたいという一心で、森永はグビグビと飲み進める



「あの子大丈夫?」
「ペース速すぎない?」




一応心配はしてみるものの、完全に自己責任だ
地味子は勿論お酒を口にしていない
未成年が酒なんてワルのすることだ
それに晃司や翔瑠がきっと怒るだろう


わいわい楽しくゲームをしながら、時間が過ぎていく




「蛍介って酔うと気が大きくなるんだね。流星はその逆で泣き虫ヘタレ…」

「美怜は笑い上戸…ぶーちゃんって誰?」
「多分蛍ちゃんかな…で、唯ちゃんは――飲み過ぎて寝てる」
「森永に至っては――もう呂律回ってないし」




地味子と瑞希、二人はこの状況を地獄絵図として眺めていた
とりあえず――彼らに酒を飲まさないほうがいい事は確かだ
未成年が飲酒なんてとんでもない…!




「どうする、これ?」
「どうするも何も…放っておくしかないんじゃない?」
「うわ、瑞希ちゃん…意外と厳しい」




怖いよぉ…とガクブルする地味子は、近くにあったコップに口を付けた
こうなったら水でも飲んで落ち着こう…


…あれ、これ、何か苦くない?




「って、お酒――!?」
「地味子っ!?」
「の、飲んじゃった…一口…」

「お前ら、何をしてるんだっ!?」




運が悪いのか、指導員二名が部屋に入ってきた

あ、タクさんとゼウスさんだ




「何だこの有様は…酒!?」
「はぁい」
「き、君は名無しさん…!? まさか君まで飲んだのか?」




現状を目の当たりにして、タクさんはショックを受けたようだ
こっそりと少し気に入っていた女子に、軽く裏切られた気分である




「瑞希さん、君は飲んでいないよね?」
「あ、はい…」
「そっか。よかった」




いつものスマイルで、ゼウスは笑いかける
ぽっと赤く顔を染めた瑞希だが、直ぐに地味子の事が心配になった




「あのっ、地味子は水と間違えて飲んだみたいなんですっ」
「そーなのー」
「本当に…?」




例の着ぐるみパジャマを来た彼女を見て、困惑する
まるで子供みたいで少し可愛いと思ったが、これも仕事だ

たった一口でもお酒はお酒
しかも相当弱いのではないか…
眼がもう蕩けて今にも寝そうだ
時折目を擦っている姿は…本当に子供みたいだ




「うーん…」
「地味子、眠いの?」
「この、時間は――もう、寝てるんで…」
「地味子!?」




くてんと寝ころんだ地味子に、瑞希は手に負えないと思った
とりあえず、地獄絵図に一人また追加されたようだ




「やれやれ…未成年が飲酒とは」
「あ、ゼウスさん…」
「私が彼女を運びましょう。ベッドは其方ですね?」
「は、はい…」




ベッドの上には地味子のバッグが一つ置いてある
其処が彼女の寝るスペースだけど、どうして解ったのだろう?

ゼウスが眠る地味子に手を伸ばして――ふと、その手が振り払われる
驚いたのはゼウスだった

触れかけていた手を思わず引っ込めると…




「…うぅ…ワルの、気配がする…」
「ワル?」
「――ワルは、許さないぞ…ぐぅ…」




何を言っているのか解らない…
しかし、触れようとした手を反射的に振り払われたのは、少し驚いた

先程の事もあるので、今度は触れずに声を掛けてみる




「名無しさん? 起きて下さい」
「…ぐぅ」
「駄目ですね…」
「今日はこのまま寝かせるとしよう。他の奴らも酔い潰れているようだし――」




部屋の中は、男女複数名が酒を飲んで深い眠りに堕ちていた
指導員が見ているにもかかわらず、ぐっすりと眠る女子生徒に溜息が出る



――カシャリ


ふと、小さな音がした
此処に来るまでに何度か、似たような音が聞こえていた

気のせいだろうか?




「お前今、何か聞こえなかったか?」
「いいえ。何も?」
「そうか…次の部屋に行くぞ」
「はい、先輩」




瑞希は深く溜息を吐く
瑞希は、お酒を飲んでいない自分までとばっちりが来ると思ったが、それも杞憂だったようだ
地味子もお酒を飲んでさえいなければ、きっと怒られずに済んだだろうに――




「うう…私は、ワルだ…着ぐるみ着て、お酒飲んで――!」
「ちょ、地味子!? 脱がなくていいんだってば!」
「き、君! やめなさい!」
「先輩。しっかり見てるとか最低ですね。見損ないました!」
「えええええっ…」




騒がしい夜は、まだまだ続いた…




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