HERO GIRL

□私と夜とコンビニ
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「よ、よぉ…地味子ちゃん!」
「…イラッシャイマセー」
「何で機械的!?」




――照れた様子の道也が居た

なんかもう隠す気すらないようで、スマホを構えている姿がいっそ清々しい



「コンビニ店員の地味子ちゃんを撮っていい?」

「…もしもし、警察ですか? コンビニに盗撮してる人が」
「地味子ちゃん?」
「あ。これって内線だった」
「ホントにかけようとするのやめて!?」




舌打ちをする地味子にビビッて、道也は慌ててスマホをひっこめた
そこで気づいたように森永と敏斗を見る




「あ? おめーらいたのかよ」

「「ひっ…!!」」

「さっきから居たでしょ」




自分を見ていたなら視界に入ったと思うけれど…
どれだけアウト・オブ・眼中なんだ、こいつは




「何を買いに来たの。お酒?」
「お、俺は酒なんて飲まねーし!」
「だよね。本当に買いに来たらぶん殴ってるところだった」




彼女ならやりかねないと、森永は思う
あれ、もしかして僕も殴られかけてた?
え、怖い

そして道也がズンズンと近づいてくるのに、すぐには気付けなかった




「森永、てめー…」
「は、はいぃっ」
「レジカウンターは神聖な場所なんだ。肘なんか突いてカッコつけて…あぁ?」
「ごごごごごめん!!」




神聖って何だ、と問いかけてもいいかな
一気に賑やかになったと、地味子は暇を持て余さなくて済むみたいだ

でも道也に絡まれているあたり、森永も敏斗も可哀想だと思う
特に敏斗はとばっちりだ
森永は以前道也に虐められた過去があるから、余計に反抗できないんだろう




「道也、森永を虐めないの」
「い、虐めてねーって。俺達仲良し! なっ?」
「う、うん…っ」
「(何で僕まで…)」




道也を中心に、森永と敏斗が肩を組んでいた
何この光景、異様過ぎる
本当に仲良しなのかと疑いたくもなるが、放っておこう…




「よーっし。仲良し三人で帰るべ!」

「「えっ」」

「地味子ちゃん、また来るね!」
「来なくていいよ」
「えっ」
「ありがとうございましたー」




道也が居なくなったのはよかったが、森永と敏斗まで連れ去られてしまった
折角の話し相手が…道也の奴!




「あ、ビラが剥がれかけてる」




こんな位置によく店長は貼れたな…それとも蛍ちゃんかな?
とりあえず剥がれているところ貼り直して――よし、これでいい!




「うわぁ…」



ふと目に入ったのは、ゼウスだった
そこではきりっとしているのに何故かあの変態顔が浮かんでくる
ゼウスって本名じゃなかったんだと思いながら、地味子はレジカウンターからマジックを一本撮りだした


きゅぽっ



「もう捕まったんだし、記しつけておこう」



それはもう何か恨みがあるのかって言うぐらいに、大きくバツ印を書き込んだ
これであの変態顔を思い出すことはない
大きな一仕事したと、額の汗を拭った

それにしても、指名手配犯ってまだこんなにいるんだなぁ
殺人、強盗、詐欺、窃盗、盗撮、痴漢…ワルでいっぱいだ、世の中は

こんな悪い奴らが今もまだ逃げ隠れしているのだろうか
精神的にアレだったり、衝動的や突発的など、注意事項らしきものが一人一人に記されている
なんか大変そうだと思った
ちなみにゼウスは衝動的な人らしい、これも消しておこうか

男装、女装、ニューハーフ、整形etc…いろいろな人がいるものだ、世の中は




ちりん



あ、またお客さん――




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