HERO GIRL
□私と夜とコンビニ
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「あれ、紅輝だ。こっちの方まで来るって珍しいね？」
というか、このコンビニに立ち寄る理由が見つからない
四宮の家はここから学校を挟んでずっと遠かった気がする
帰り道が正反対の方向だったことはよく覚えていた
それがどうしてここにいるのだろうか――あれ、荷物？
「これから何処かに行くの？ え、休日を使って旅行？ 神戸まで行くの？ いいなぁ…あっ、お土産よろしくね！」
よし。お土産の約束を取り付けたぞ！
四宮はお茶を買いに来たそうだが、何もここまでくる必要ないんじゃないかな
家の近くにもあるだろうし、何よりバス乗り場近くにもあったはずだよ。
夜行バスで行くんでしょ？
…まあいいか
「気をつけてねー。ありがとうございましたー」
さて、何しよう…
「地味子！」
「うわっ！？ 吃驚した、美怜ちゃん？」
「ぶーちゃん居ないの？？」
「う、うん…数日は休み取ってるよ」
いつの間に店に入ってきたのだろうか
全然気づかなかった、不覚…
それにしても、美怜ちゃんはよく蛍ちゃんを気にするなぁ？
なんでだろう？
「なーんだ…」
「美怜ちゃん、この時間に買い物？」
「えっ？ あ、そうなのよー。お母さんにまた頼まれちゃってね？」
「此処より家の近所の方が近いと思うけど…」
「えぇと…た、たまには運動をね！ ウォーキングもいいと思って！」
あぁ、そう言うことかと納得した
だったらわざわざこのコンビニに来ることも頷ける
「べ、別にぶーちゃんが居ると思って来た訳じゃないからねっ！？」
「解ってるよ。美怜ちゃんは蛍介の事が好きなんだもんね」
「そ、そうよ！」
そんなに必死に否定しなくてもいいと思う
怪しさ満点だよ…
でも、美怜ちゃんがアタックしても、蛍介ってば意外と普通なんだよね
あと美怜ちゃん、この季節にショーパンは寒くないの、大丈夫？
「買い物もあるし、長居してたら怒られちゃうから帰るね？」
「うん、美怜ちゃん気をつけてね」
「地味子もだよ。何かあったら電話してね。絶対だからね！」
「わ、解った…」
何度も念押しをされて、美怜はコンビニを出て行った
ちりん、と音が鳴るのをこの短時間でどれだけ聞いたのだろう
今夜はいろんなお客さんが来ると思う
その過半数が友達と来た
…なんだかまだ来ない気がしなくもないと、時間を確認すればもう２３時だった
時間が経つのは早い物だと思う
ちりん
あ、また鳴った…
「地味子―」
「瑞希ちゃんと…流星？」
「おう」
「どうしたの、二人してデート？」
「そんなわけないでしょー。って言うかその言葉使いたいだけじゃん」
バレたか、と地味子は笑う
瑞希は当然デートとは思っていないが、流星は何気にショックを受けていた
え、デートとか思ってたの？
「ちょっと買い物しに来ただけなんだけど、流星が付いてくるって聞かないの」
「一人じゃあぶねぇだろ」
「うん、ありがとう…頼りにしてる」
「…！ おう」
あれ、なんでこの二人ちょっと仲良くなってるの
元々幼馴染だからってのもあるけど
流星が瑞希ちゃんを好きなのもバレバレなんだけど、瑞希ちゃんの方は…ちょっとだけ変わったかな？
「らーぶらーぶ」
「…お前、何言ってんだ？」
「青春だなと。これぞ高校生！」
流星が呆れた様子で此方を見てきた
何それ酷い
瑞希はお菓子が並ぶコーナーに移動して、一生懸命選んでいた
「そう言えば、バスコと翔瑠をさっき公園で見たぞ」
「晃司ならこの時間は筋トレしてると思う。で、翔瑠はその付き添い」
「今、それを見てきたからな…」
声を掛けようにも、集中していたから躊躇われた
ついでに言うと、夜中に公園で筋トレする怖い奴なんて、自分でさえも近づきたくない
「あー、私が終わるのを待ってるって言ってたかな。でも営業妨害になるからって入ってこなくて」
「営業妨害？」
「さすがにこんな所で筋トレなんかで出来ないよ」
「…その前に、お前は何時上がりなんだ？」
「え？ ７時だけど…」
つまり、朝まで筋トレするつもりなのだろうか
馬鹿なのか、あいつは…いや、馬鹿だったか
「明日学校休みだけど、流石に晃司も補導されちゃうよね…翔瑠に言っておくよ」
「そうしろ」
「流星、お菓子どれがいい？ あんたも選んでいいよ」
今は店長もいないし、こっそいりいいよね
スマホで翔瑠にメッセを送ろうっと――
地味子【晃司を連れて帰ってね】
翔瑠【解った】
返事は直ぐに来た
翔瑠も朝までコースじゃなくてよかったと、ホッとしてくれることを祈る
瑞希が持ってきたカゴ一杯のお菓子に、少し驚いた
こんなに食べるのかと聞いたら、その殆どは流星にあげるそうだ
何この子優しい
でもこれって、全部流星が出すって言ってたよね、まあいいか
お買い上げ、ありがとうございまーす
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