HERO GIRL

□私とグラサン男と超絶美人
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それから譲さんの携帯に一本の電話が入ったので、彼は席を立った
電話に出る前に『淳助か』と呟いていたけれど、誰かな

…なんか、何処かで聞いた名前だなぁ?




「ごめんね。こんなはずじゃなかったんだけど…」
「いえ、気にしてませんから」
「そう? それと――さっきの話、私は貴女と友達になりたいんだけど」
「大歓迎です。貴女みたいな美人とお友達になれるなんてっ」
「…貴方って、私の知り合いたちみたいなことを言うのね」



この姿だと、いい寄ってくる男達は皆、揃って同じことを口にする
正直聞き飽きていたし、どうでもよかった
それを彼女まで言うとは――




「あはは。女の子の友達ってなかなかいなくてね」
「あら、学校にも友達は居るでしょ?」
「うーん、女友達は今のとこ3人かな。あとは全部男の子…」
「!? どんな高校生活を送ってるの、貴女?」



至って普通ですが?
あ、授業中寝てたりとか、試験の結果が悪かったりとか…やっぱ普通じゃないかも
正直にそれを話すと、彼女はポカンとしたのちにくすくすと笑った



「貴女って…面白いのねぇ」
「明里さん酷い。これでも真面目に生きてる」
「ふふっ…楽しそうで羨ましいわ」
「明里さんの高校はどんなところなの?」




それを聞いたら、彼女は途端に表情を曇らせた気がした




「…外見ばかり見る人が多いの。そのせいでとても苦しんだ。私は何もしていないのにってね。だから変わろうって思って、それで――」

「綺麗な人を妬むなんて! 明里さんは何も悪くないのにね」
「えっ。えぇ…」
「人は見た目って言うけれど、中身だって大事だと思うんだけどな。こればかりは人それぞれなのかなぁ…」
「――貴女は、どっちなの?」
「んー」




外見重視?
それとも、内面重視?

そんなの――両方知ってみないと解らないと思う




「友達になってからじゃないと、解らないと思います!」
「…」
「ちなみに友達はイケメン好きで外見重視だけど、外見がワルっぽくても中身は優しいって解ってる友達もいるから、やっぱり人それぞれなんだなぁって」




大切な女友達を思い浮かべて、地味子は笑った
明里はそれを見て…苦笑する




「本当に友達想いなのね、地味子は」
「友達が悲しんだりするのは見たくありませんから」
「…優しいのね」
「明里さんももう友達ですよ」
「え?」




あれ、反応が鈍い
さっき友達って言ってくれたのはそっちなのに…え、友達ごっこだった?




「連絡先知ってるし、こうしてお茶もしたし、話してて楽しいし」
「…地味子は、本当の私を知っても友達でいてくれるかしら」
「本当の私って?」
「その…ううん、やっぱり――何でもないわ」




彼女は上手く言葉が出てこないようで、地味子は首を傾げた

あれかな、蛍介が唯に言ったようなことを言ってるのかな
『太ってる人はどう思う?』とか『僕がもし太ってたら…』とか

世間一般的には、受け答えした言葉と、実際に会った時の感想が違う人だっているから、何とも…


あ、私はどうかって聞かれてるんだっけ?
うーん――過程の話ばかりされてもなぁ




「うーん…」
「地味子? あの、もういいわよ?」
「あー…じゃあさ、その本当の私って言うのをいつか見せてよ」
「え」
「本当の私って言うのも結局は明里さんなんでしょ? どんな人か見て、友達になってみない事には、何も始まらないと思うんだけど…あの?」




すると、明里さんは急に黙り込んでしまった
何か言った言葉が間違いだったのだろうかと、心配になる




「明里さん? 何かごめんなさい…?」
「いいえ…そうね、貴女の言う通りよ」
「えっと…」
「ふふっ…」




やがて彼女は笑い出した
本当に可笑しく、笑っていた




「貴女って本当に面白いのね。何処かズレていると言うか、根本的におかしいと言うか…」
「え、何これ。褒められてるの貶されてるの」
「そう言うところも面白いわ。好きよ」
「…明里さんが笑っているならそれでいいです」





――お嬢があんな風に笑っているところを、初めて見た気がする

大人びた印象の彼女を、年相応にさせている
そうさせた例の女を見つめていれば、自分が電話をしていた事すら忘れかけていた




『――おーい?』

「あぁ…聞こえている」

『あんたがボーっとするなんて珍しい』

「淳助」

『あん?』

「お前――名無し地味子って憶えているか」

『…あの刑事の娘?一回会ったな。あんたに初めて会った日だ』

「…あの日か」

『俺もあの頃は若かったなー』




なんか喧嘩武勇伝を語り出した淳助を無視して、通話を切る
淳助がまた電話を掛けてくることはなかった




「おい…」
「は、はいっ」
「テイクアウトを頼む」
「は、はぁ…かしこまりました」




目の前を通りすげる店員を捉まえてから、譲は元いたテーブルに戻った




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